本当に狂っているのは
投稿者:風見鶏 (6)
私が中学生の頃の話です。
私は仲の良い友人のA、B、Cと同じ塾に通っていました。
通っていた塾は自宅から自転車で10分程の距離にあり、いつも近くの廃アパートの前で皆で待ち合わせをして通っていました。
塾が終わるのは22時位で、終わってから廃アパートの前で皆で雑談してから帰るのがお決まりでした。
誰と誰が付き合っているだとか、〇〇先生と△△先生がラブホに入っていくのを見ただとか、いかにも中学生らしいくだらない話でよく盛り上がっていたのを覚えています。
あれは夏の事でした。
いつものように塾帰りに雑談していると、
「花火持ってきたからやろうぜ!」
とAが言い出しました。
あまり遅くなると親に怒られるので一瞬悩みましたが、夏休み前という事もあり浮かれていた私たちは誘惑に負け、満場一致で賛成しました。
いつの間にか手持ち花火だけでなく、火柱が出る置くタイプのやつや、ロケット花火までやり始めていました。
皆テンションが上がり、周辺住民の事などお構いなしにお祭り状態になっていた時です。
どこからか「コーン、コーン」と何かを叩くような音が聞こえてきました。
最初は、なんだろう?程度に思っていたのですが、暫くするとだんだんと音が近くなってきている事に気付きました。
「なあ、この音何?」
流石に気になり始めたのか誰かがそう言うと、皆我に返りピタっと動きを止めました。
音のする方を見てみると、遠くから誰かが歩いて来るのに気付きました。
背格好から男性ということがわかり、良く見ると何か棒のような物を持ち、その棒で地面を叩いていてその度に「コーン、コーン」と音が鳴っていました。
「あ、やばい」
私はすぐに周辺住民が苦情を言いに来たのだと察しました。
私たちが自分に気付いたのがわかったのか、
「おーい。なんなんだおまえらよぉ。なあ。」
そう言って近づいてくる男性に皆ビビっていると、誰かがこう言いました。
「キ〇ガイだ」
その言葉を聞き、皆一斉に持っていた花火を捨て自転車に跨り一目散に逃げ出しました。
去り際に振り返り男性を見ましたが特に追いかけてくる様子もなく、皆そのまま解散する事にしました。
後日、友人達とあの日の話で盛り上がっているとBが、
「俺、あいつの家特定した!」
とドヤ顔で言いました。なんでもBは去り際に男性の顔を見たらしく、通学時に目撃し尾行したとの事でした。何故か皆から賞賛を受け英雄扱いとなったBは腕組みし、意味もなく小声で
「あいつの家さ、あの廃アパートの近くなんだよ。それでさ、今夜塾の帰りに呼び出そうぜ。」
と悪巧みをし始めました。
「呼び出すって、どーやって?」
と聞くと、
「また騒いだら出てくるだろ。知らんけど。」
と無責任な事を言い、更にこう続けました。
「あいつさ、キ〇ガイなんだろ?そんな奴がいたら怖えじゃん。だから、呼び出して退治しようぜ。」
それを聞いた皆は納得できるようなできないような反応で、とりあえず塾の帰りにいつもの場所で雑談する事にしました。
その日の塾帰り、廃アパートに行くと友人達の他に何故か3人の先輩がいました。
この先輩達は所謂不良で、BとCがこの話をしたところ面白がって来たとの事でした。
私はあまり面識が無かったのでビビりながらも、先輩達の機嫌を損ねないように気を遣っていました。暫くすると先輩の一人が、
「待ってんのめんどくせーからよ、そいつの家に直接凸ろうぜ」
と言い出しました。
流石にそれはマズイんじゃ、、、と思いましたが言えるはずもなく、私たちは仕方なくBの案内で男性の家に行くことにしました。
Bの言う通り男性の家は廃アパートからすぐのところにあり、庭に立派な樹が一本生えている一軒家でした。
表札には「渡辺(仮)」と書いてあり、それを見た先輩が、
「渡辺ー!!出てこいやー!!」
と叫んだと思ったら、急に門を蹴飛ばしました。
「いやいや、何してんのこの人」と思い、もう帰りたい気持ちでいっぱいだったのですが、友人達はケラケラと笑って見ていました。
自分の身に起こった事(被害者側として)に近くて何とも言えない気持ちになった
どうすることもできないと言って開き直れるほど狂ってるんだよね