間違えたリコーダー
投稿者:ぴ (414)
小学生の頃に、私は自分のリコーダーと間違えて別の子のリコーダーを持ち帰ったことがあります。
持ち帰って「あー、やってしまった」と後悔したのです。
しかし、そこに書いてある名前が見覚えのないものだったのが引っかかっていました。
翌日学校に持って行って先生に聞いてみたけど、その名前の生徒は同じクラスにも同じ学年にもいませんでした。聞き覚えがないわけです。
さらに言えば、同学年どころか全校生徒の中にもその名前と一致する生徒がおらず、しばらく先生が預かって呼びかけたけど、持ち主は現れなかったそうです。
その代わり私のリコーダーは半日ほどですぐに見つかりました。
しかし見つかった場所が旧校舎だったらしく、私は首を傾げたのです。
旧校舎は生徒があまり寄り付くことのない校舎です。校舎全体が古くって危ないので近寄らないようにと注意されており、私は入ったことがありませんでした。
もちろんそんなところで、リコーダーを落とした覚えもありません。
どうしてそんなところに落ちていたのかと担任と一緒に首を傾げたのです。
有耶無耶のまま、私は小学校高学年になり、その頃に旧校舎が取り壊されるという噂を耳にしました。
そんなある日の放課後に私のロッカーの奥に何かがあるのに気づきました。
そっと奥を探ってみると、それはリコーダーでした。引っ張りあげてそれを見ると、一度見たあの名前が書いたリコーダーだったのです。
私はこれを見て腕にささっと鳥肌が立ちました。
かなり内心動揺していたら、近くを通りがかった誰かに呼び止められたのです。
振り向くとその子は私が見たこともない長い黒髪の生徒でした。
私よりもいくつか年下に見えるその子は「それ私の」と私が持っていたリコーダーを指さしたのです。
困惑しながらそのリコーダーをその子に渡すと、その子は一瞬だけにこっと笑って私に言いました。
「また拾ってくれてありがとう」とそういって、その子はすたすたと歩いて校舎の曲がり角を曲がっていったのです。
もう一度私は先生に聞いてみたけど、あのリコーダーの名前の生徒はやっぱり学校にいなかったです。
あの子が一体誰だったのかは分かりません。
旧校舎はその後少しして予定通り取り壊されました。
もしかしたらその生徒は旧校舎に通っていた生徒だったのかもしれません。
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