「ですから!私がユミの母親なんです!」
聞こえてきたのはとんでもない一言だった。
妻がハッとしてエレベーターを見ると、先程の女性がユミちゃんを連れて乗り込もうとしていた。
「ユミちゃん!エレベーター!エレベーターのところにいますよ!」
妻も咄嗟に大声をあげて指をさした。係2人と母親という女性がエレベーターに視線を向けた。母親を名乗った女性はユミちゃんの手を引いてエレベーターに乗り込む。
「ユミ!ユミ!」
母親は名前を呼びながら必死に追いかけていく。係もそのあとを追いかけて行った。
だが、無情にもエレベーターのドアは閉まってしまう。妻もこの一大事にエスカレーターを駆け下り、1階のエレベーターに向かった。1階に下りるとエレベーターが着いたあとで、母親を名乗った女性がユミちゃんの手をぐいぐい引きながら出口へと歩いていく。
誘 拐
その二文字が脳裏を過る。妻がその女性に向かって走っていくと
「すみません、そこのあなた!」
出口にいた警備員は女性を呼び止めた。どうやら2階のサービスカウンターの係の1人が連絡したようだった。
ピタッ・・・と歩みを止める女性とユミちゃん。
「申し訳ありませんが、事務所で少しお話お伺いできますか?」
と警備員が語気を強めて女性に問いかける。
「急いでますので」
平然と女性は言い放ち出口を抜けようとする。
「ユミ!」
背後で母親の声がした。ようやく追いついたのだ。
「ユミちゃん、行きましょ」
視線をユミちゃんに向けることなく、まっすぐ向いたまま言い放った。
警備員が再度「すみませんが事務所で」と言いかけたとき
「ああああああああああああ!!!!!!!!!もうおおおおおおおおおおおおおおおお少しだったのにいいいいいいいいいいい!!!!!!!」
と半狂乱になって持っていたバッグを振り回す。止めに入った警備員を突き飛ばし走り去っていった。その光景にそこにいた全ての人が呆気にとられた。
警備員数人が追いかけ、警察にももちろん通報したが女性を捕まえることはできなかったそうだ。
「この話のなかで、私が本当にゾッとしたのはなんだかわかる?」
妻がニヤニヤしながら話を聞き終えた俺に問いかけてきた。
「偽物の母親の顔とか?」
「違う違う(笑)確かに怖かったけどそれじゃない」
「それじゃ最後暴れたってとこ?」
「あれもビビった!でも違う」
「んー、ユミちゃんて名前じゃなかったとか?」
「それも違う。でも迷子のアナウンスでは名前を読み上げていなかったのに”ユミちゃん”て迎えにきたんだよあのおばさん」
「マジ?」
「マジだよ」
「それが一番怖い」
「でしょ?でもそこじゃないんだよ・・・。私が本当にゾッとしたのはさ・・・追いかけてきたお母さんに向かって、“この人誰?”ってユミちゃんが言ったことなんだよね。」
不気味ですね
正しい母親は現れたのでしょうか
まさかの大賞受賞に感激です。たくさんの怖い、ありがとうございました。
母親は誰なのだろう!
大賞すごい
面白かった!
この方の作品は、ハズレがないというか、怖さのツボを抑えておられますね。
創作なのか実話なのか気にならないほど、クオリティが高くて読みやすい。
怖ぇ
実話でなければ、こんなに臨場感でませんよね。
そのあと、お父さんと名乗る男性も何人か来たそうな。
背筋がゾクッとしました
創作だと思うけど怖
だ、だれか、、も少し解説なんぞを、、、