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心霊

足が太いさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

私も一緒に連れていけ
長編 2022/06/24 12:00 3,131view
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友人のアリサ(仮名)と、近所の大学の文化祭へ遊びに行った時の話しです。
その大学は毎年、文化祭を一般公開していて、私はアリサに誘われて初めて行きました。
校庭にはいくつかの食べ物系屋台が出ていて、室内では色んな催し物がされていました。
私は、一度来たことがあるというアリサに案内されるがまま、あちこち見て回っていたのです。

30分程見て回っていると、いつの間にかお化け屋敷の催し物のところに辿り着きました。
私はあまり乗り気ではなかったのですが、アリサが「絶対に入りたい」と言うので、渋々ついていったのです。
お化け屋敷の中に入ってみると、結構作り込まれていて、なかなかの迫力でした。
私達の数メートル先に他のお客さんがいるようで、時々悲鳴が聞こえてきます。
アリサと顔を見合わせ、「思った より怖いね」と頷き合っていると、後ろの方から「私も一緒に連れて行ってください」という女性のか細い声が聞こえたのです。
びっくりして悲鳴を上げながら後ろを振り向くと、そこには私達よりも少し年下に見える1人の女性が立っていました。
私が何も言えずにいると、さっきの女性の声が聞こえていたらしいアリサが「いいですよ、一緒に行きましょう」と答えました。

私も気を取り直し、「1人で来たんですか?結構作り込んでいて怖いですよね」と声をかけながら、3人で一緒にお化け屋敷を進んでいきました。

時々現れる脅かし役の人にびっくりしながら恐々進んでいると、急にアリサが立ち止まりました。
「アリサ、どうしたの?」と問いかけると、「何か変じゃない?」といぶかしそうな顔をしてこちらを見てきました。
「変って何が?」
「入口にいた案内役の人は、1つの教室を使ったお化け屋敷で所要時間は10分くらいって言ってたよね?それなのに私達、もう30分は歩いてるよ」
ほら、とアリサが腕時計を見せてきます。
お化け屋敷に入ったのは確か14時ちょうど、時計の針は14時30分を指しています。

一体どういうことなのか、アリサと2人悩んでいると、近くにいた女性が「あの、取りあえず前に進んでみませんか?そうすればいつかはここから出られると思います」と言ってきたのです。
それもそうかと思い、再び歩みを進めたのですが、歩いても歩いても一向にお化け屋敷の出口が見えてきません。
時間は15時を過ぎており、教室の中に作られたお化け屋敷でこんなに彷徨い歩くなんて、ちょっと異常です。
自力では出られないと思ったので、脅かし役の人に「すみません、リタイアしたいので出口まで案内してください」と声をかけたのですが、誰も返答を返してくれないことにも違和感がありました。

おかしなことはもう1つあります。
途中で一緒に歩くことになった見知らぬ女性が、私とアリサが歩き疲れて立ち止まる度に「早く、ここから出ないといけないのに、休んでちゃダメですよ」と、急かしてくるのです。
「疲れてるので少し休憩させて」と言っても聞いてくれず、どんどん語気が強くなっていき、私もアリサも、女性の豹変ぶりに恐怖を感じてとうとう動けなくなってしまいました。
私とアリサが女性に怯え、思わずしゃがみこんでしまうと、女性はますます大きな声で「早く歩いて!早く!早く!早く!」と顔を近づけて至近距離で怒鳴ってきました。
その表情が、老婆のような鬼のような恐ろしい顔つきで、この時やっと「もしかしてこの女性は生きている人ではないのかもしれない」と思ったのです。

アリサも同じことを考えたのか、女性の隙をついて私に「合図したら2人で走って逃げよう。あの女の人と一緒にいると、ずっとここから出られない気がする」と小さな声で言ってきました。
そして、しばらく何もなかったかのように歩いて、不意に「あ!」と女性の後ろを指さして気を散らせている隙に、アリサとその場から逃げ出しました。
震える足を叱咤しながらがむしゃらに走っていると、後ろから「待て!待て、連れていけ、私も一緒に連れていけええぇぇぇぇっ!」と、私達を呼び止める声が聞こえたのです。
走りながら少し後ろを振り向くと、あの女性が髪を振り乱しながら追いかけてきていました。
女性の顔はもはや人には見えず、まるで地獄の鬼のような形相で、あともう少しで追いつかれてしまうという時、1m程先に光が見えたのです。
光を目指して一気に駆け抜けると、そこはお化け屋敷の外でした。

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