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不思議体験

ぴさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

知らない人が話しかけてくる
長編 2022/06/17 12:15 3,477view
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当時の私は小さな印刷会社で働く、一会社員でした。

順風満帆とは言い難く、仕事で嫌なことは山ほどありました。

嫌味な上司に小言をたくさん言われ、手を抜いて働く先輩には仕事を押し付けられ、仕事ができない後輩の面倒を見る役目まで任されて、もういっぱいいっぱいだったと思います。

生真面目な私はいろんな仕事を押し付けられて、身も心もくったくたに疲れ切っていました。

そんなときに身の回りでなんだか不思議なことが起こるようになったのです。

初めて私が「え?」と思ったのは、残業翌日に眠気を我慢して出社している途中でした。

前日は夜中まで仕事をしていて、睡眠時間も少ないし休んだ気がしなかったです。

最寄り駅で電車を降りて会社まで徒歩で歩いているところ、突然知らない女性から不意に声をかけられたのです。

「うわ~、びっくりした」と一目私を見て、その人は言いました。驚いて、「え?」となっている私にその人は「わぁ、ここらへんに住んでるの?いや久しぶりだね」と馴れ馴れしく声をかけてきたのです。

私は記憶力はそこまで悪くないはずだけど、突然話しかけてきたその人の顔はぜんぜん思い出せませんでした。

心の中では、「誰?」と思いつつ、もし仕事の関係の人だったらまずいと私は最初話を合わせて聞いてしまいました。

その間にどうにかその人を思い出そうとしたのですが、どう見ても知らない人なのです。

けれどあまりに慣れ慣れしいので、私は「誰ですか?」と聞くことができず、そのままその人のペースで数分立ち話をしてしまいました。

そして「また会ったら飲もうね!」と言われ、その知らない人は立ち去っていきました。

その日は一日、その人のことで悶々としてしまいました。

いくら疲れていたとしても、一度会った人のことをぜんぜん覚えてないことなんてあるのかと自分が心配になりました。

考えた末、相当疲れていたんだなと自分で無理やりに納得して、また日常生活に戻ったわけですが、その日から数か月も経たずにまた不思議なことが起こったのです。

この日は休日で、スーパーで買い物をしているときでした。目の前に20代くらいの髪を染めた少しチャラついた男性が歩いてきて、私に「あれ?」と声をかけてきました。

「こんなところでどうしたの?」とその人から声をかけられ、私はきょとんとしました。

「こんなところ」と言われても、そこは私の生活圏内で、まるで友人のように声をかけてくるその男の人が不審で仕方なかったです。

明らかに知らない人だったので、私は「どなたですか?」と聞いたのです。

その人は肌が真っ黒に日焼けしてがっしりした体型。目立つかっこいい容姿をしており、かつ若い男性でした。

そんな知り合いが思い当たらない私は、思い切って聞きました。

するとその人は一瞬ぽかーんとして、「え?覚えてないの〇×の居酒屋で一緒に飲んだ俺だよ俺」と名前を名乗りました。

ここで思い出したら良かったですが、私はその人の名前を聞いてもぴんと来なかったのです。初めて聞いた名前でさらに困惑しました。

その人は私が困っているのを空気で感じとったのか、「よく飲んでたから酔っぱらって覚えてないか〇〇ちゃん」と自然に私の名前を呼んだのです。

私の知らない人が私の名前を知っていることに驚きました。

ということは相手はまったく知らない人ではないことになります。なのに私は知らないのです。

また私と彼が会ったという居酒屋は、昔何度も通ったことがある居酒屋で、しかしもう何年も足を運んでいません。

そこで一緒に飲んだというのです。なんだか気味が悪くて、私は引き留めようとする彼を振り切って、逃げるようにそこから立ち去ったのです。

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