父さんの声
投稿者:八尺マン (46)
短編
2022/06/13
21:52
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俺は嬉しくなった
ほとんど記憶にない父さん
でも、ずっと側にいてくれたのだ
「ねぇ。これからも一緒にいてくれる?」
俺はさらに言葉を続けた。
もっと、もっと会話したかった
「ああ。もちろんだよ。オイデ」
俺はここで違和感を覚えた
何がおかしいか具体的にはわからない
でも、さっきまで俺の父さんに違いないと思っていたのが、あれ? 違うかもと思ってしまったのだ
俺は思わず聞いてしまった
「なあ。そこにいるのってホントに父さん?」
すると何も喋らなくなってしまった
嫌な沈黙が続いた
まずい。聞いちゃまずかったかな?
「ごめん。疑うわけじゃなかったんだけ・・・」
「オイデ オイデ オイデ オイデ オイデ オイデ オイデ」
俺の言葉を遮ってドアの向こうから聞こえてきた声は、明らかに異常な声だった
さっきまでの声とはまったく違う、しゃがれた声だった
違う
ドアの向こうにいるのは父さんじゃない
別の何かだ
ガチャガチャガチャ
ドアノブが激しく回される
ドンドンドン
激しくノックもされた
俺は慌ててドアノブを掴んで押さえた
こっちに入ろうとしている
「帰れ! 帰れよ!」
俺は叫んだ
怖くて仕方なかった
無我夢中にドアを押さえた
どれだけ経ったろうか
気が付けば、辺りは静まり返っていた
俺は恐る恐るドアを開けると、外には誰もいなかった
それから1か月、特に変わったことは起きていない
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