怨嗟

「世の中には怖いもの見たさに、心霊スポットと呼ばれる場所にありがたがってやってくる馬鹿がいる。そいつらを利用しよう。それに金目のものがあると言っておけば犯罪者のような連中も来るかもしれない。この際誰でもいい、よりたくさんの人間をあの家に引き入れなければ」村長はそんなことを言いながら一人で動画のシナリオを考え、出演者を職員から選び出し、遠く離れた都会の何も知らない会社に撮影を依頼したのです。

　あなた方の制作した動画は呪いをよその人間へなすり付けるための呼び水だったのです。何も知らないあなたを責めるつもりは毛頭ありません。すべては私たちの村の問題であり、このような人間を村長に選び、なにもすることができなかった我々村民の弱さの問題です。私はこの村の問題であなた方や真意を知らない来訪者が苦しむことになることがとても心苦しい。ですから私はすべてをお伝えしました。これが唯一私の出来る罪滅ぼしです。勝手なことばかり申し立てましたが、本当に体にだけは気を付けてお過ごしください。

　
　手紙を読み終わった私はMにメッセージを送った。2日経っても反応がないので電話をかけたがつながらない。次の日時間帯を変えて電話したがやはりつながらない。

　今日に至るまでMと連絡が取れない以上Mがどうなったか知るすべはない。Mはあの日どこまでを知っていたのだろうか。そして、私があれから大きい病気やけがをしていないのは、あの日余計な好奇心を持たずに車にいたからだろうか。正解を知らせてくれる者はいないし、不正解だった者を探すにも手間がかかりそうだ。

　あれからの××村について私は何も知らない。少し調べれば今の村長が誰か、村内の公園、あの商店のことも分かるだろう。だが私はそれをしない。あの村は3年前のあの状態のままでいればいい、消えてなくなるな。その醜態を晒し続けろ。あのキレイな一軒家の壁が汚れ、ひび割れ、朽ち果てていくまで。