ドッペルゲンガー
投稿者:とくのしん (65)
元カノHの話。
クラシックバレーを習っていたHは週2回、教室に通っていた。
その日もレッスンが終わり、更衣室に入ると
「あれ?Hちゃん忘れ物?」
何のことかわからず聞き返すと
「さっき着替えてA子と一緒に出ていったじゃん」
「私、今来たところなんだけど」
Hの返答に怪訝な顔を友人は見せた
後日、レッスンが終わりいつものように更衣室へ向かう。
A子が「お疲れ~」と愛想よく話かけてきた。
A子はバレーを同時期に始めたレッスン友達で、一つ年下ということもありHを姉のように慕ってくれていた。好きな芸能人も同じで、教室では特に気の合う友達。学校こそ違えどよく会って遊ぶ仲だったそうだ。
その日も着替えながらレッスンや学校のことなど、お互い近況報告をして盛り上がった。
一緒に更衣室を出ると友人2人が心配そうな顔でHに話しかけてきた。
「どうしたの?」と不安そうな友人たちに問いかけると
「・・・Hちゃんこそ大丈夫?」と妙な雰囲気を漂わせている。
先日の更衣室の一件もあって、揶揄われていると思ったHは語気を強め
「あのさ、何かいいたことがあったら言えば!」
「あの怒らないで聞いてね・・・更衣室にいたとき、誰と話してたの?」
「はぁ?A子に決まってるじゃない。ねぇA子?」
と横に視線を向けるがそこにいるはずのA子はいない。
「もしかしてHちゃん、A子亡くなったの知らないの?」
聞けばレッスン前日にA子は学校帰りに交通事故で亡くなっていた。よそ見運転していた高齢者の車に後ろから突っ込まれほぼ即死だったそうだ。
「A子が死んだって嘘でしょ?だって今そこに・・・」
「Hちゃん、更衣室で誰もいないのに一人でしゃべってて怖かったんだよ」
その日、Hは夢を見た。
バレーのレッスン後、いつものように着替えようと更衣室に向かう。誰もいない更衣室で着替えていると名前を呼ばれた。あたりを見回すが誰もいない。視線を感じて更衣室の入り口を見るとそこにはA子。ほっとしたのもつかの間、A子が必死に何かを訴えている。次第に叫ぶように何かを言っているが聞こえない。
「逃げて」
口の動きからそう見えた。ふと足元を見ると、ロッカーの隙間から伸びた手がHの足首を掴んでいた。慌てて逃げるH。だが、思った以上に力が強く転んでしまう。振りほどこうと暴れるHがロッカーに目を向けると、徐々にロッカーの扉が開いていく。ロッカーの中にいる”何か”が近づいてくるのがわかった。
「あぁ、もうダメ。逃げられない」
Hが諦めるとロッカーの中から自分の足を掴む”何か”が姿を現した。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。