ひとりかくれんぼに使ったぬいぐるみの行方
投稿者:足が太い (69)
「ひとりかくれんぼって知ってる?」
ある時、友人のアカリちゃんから、突然こんな問いかけをされました。
「ひとりかくれんぼ?名前だけ知ってるよ、ぬいぐるみと隠れんぼみたいなことをするんだっけ?」
私が拙い知識を思い出してそう返すと、アカリちゃんは「そうそう。3日前になるかな、私、やってみたの」と言いました。
アカリちゃんが言うには、暇で暇でしょうがなかったのと、ちょうど手元に元彼にプレゼントされたぬいぐるみがあったので、興味本位でやってみたのだそうです。
「それで、どうなったの?何か怖いことでも起きた?」と、私がふざけて笑いながら聞くと、アカリちゃんは顔を青くして、震えながら頷きました。
「嘘…、そうなの?」再度問うと、アカリちゃんは「本当。ぬいぐるみがね、家の中から消えたの。どこ行ったんだろう…」と呟いたのです。
アカリちゃんは、ネットに書かれている通りの手順でひとりかくれんぼをしたようです。
しかし、ぬいぐるみに「次はあなたが鬼です」と告げて隠れ、1時間程してからぬいぐるみを置いてあった場所へ戻ると、そこには何もなかったのだとか。
アカリちゃんは一人暮らしなので、誰かがいたずらでぬいぐるみを動かした、なんてことは起こるはずありません。
アカリちゃんは「ひとりかくれんぼで使ったぬいぐるみが勝手に消えるなんて…、何か恐ろしいことが起こったらどうしよう」と、すっかり参っていました。
「ひとりかくれんぼをしたのは3日程前で、その間何も起きていないのなら大丈夫だよ」と、慰めたのですが、アカリちゃんはずっと落ち込んだ様子でした。
私も何もかける言葉がなくなってしまい、気まずい雰囲気のまま、その日はお開きとなったのです。
アカリちゃんからひとりかくれんぼの話しを聞いた翌日、急に電話がかかってきました。
電話に出ると焦った様子のアカリちゃんが、何やら要領を得ないことを言っていました。
落ち着かせて話しを聞くと、どうやらアカリちゃんがひとりかくれんぼに使ったぬいぐるみが、アカリちゃんの元彼の家で見つかったそうなのです。
元彼から今朝「見覚えのあるぬいぐるみが家の中にあったけど、俺の家に忘れてた?」と電話があり、発覚したようでした。
アカリちゃんはひとりかくれんぼを終わらせる為に、元彼の家へぬいぐるみを取りに行きたいけれど、1人では怖いのでついてきてほしいと私に言いました。
とくに用事もなかったし、ちょっと興味があったので、待ち合わせをしてアカリちゃんとともに、アカリちゃんの元彼の家に行ったのです。
アカリちゃんの元彼は、快く家の中に入れてくれました。
そしてアカリちゃんに「このぬいぐるみだけど…」と言って、うさぎのぬいぐるみを渡したのです。
何の変哲もないぬいぐるみですが、それを見た瞬間、アカリちゃんは「ひぃ!」と叫んでブルブル震え出しました。
「どうしたの?」と聞いても「嘘…何で…?」とぶつぶつ呟くばかりです。
アカリちゃんの元彼が、肩を叩くと「はっ!あ、私…」と正気に戻り、おずおずとぬいぐるみを受け取りました。
アカリちゃんの様子が変なのですぐに家を出たのですが、しばらくしてやっとアカリちゃんが口を開きました。
「このぬいぐるみ、隠れる前にカッターを刺したはずなのに、それが刺さってない…」
アカリちゃんはひとりかくれんぼのルール通り、ぬいぐるみに「次はあなたが鬼です」と言って隠れる前に、「見つけた」と言ってぬいぐるみのお腹あたりにカッターを刺したのだそうです。
結構深く刺したはずなのにそのカッターが刺さっておらず、それどころか刺したあともないことで、すごく驚いていました。
「元彼さんが、カッターは危ないから取り除いて、刺した後を縫ったんじゃない?」と言ったのですが、それならなぜアカリちゃんの家から突然元彼さんの家に移動したのか、そのことについて説明がつきません。
ひとまず、このままぬいぐるみを持っているのは怖いということで、アカリちゃんは近いうちにぬいぐるみ供養の出来るお寺かどこかに持って行くと言って、帰っていきました。
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