廃倉庫の白い顔
投稿者:A (4)
母親が先に入室して知らせてくれているが、Bの声は聞こえてこない。
個室なのか、入口のネームプレートにはBの名札しか記されていない。
すぐに母親が引き戸を開けて出てくると、「私はロビーにいるから」と一礼して立ち去るので、俺達もお辞儀をした。
部屋に入ると保健室で見るような厚手のレールカーテンがあり、その影にベッドが見え、Bは布団に入ったまま上半身を起こして窓辺を見つめていた。
「…B」
俺が声を掛けるとBは振り向き、少し不器用な笑顔を咲かせる。
「おう、元気か?」
「そりゃお前だろ…」
何故か逆に俺達の体調を窺うBのユーモアにどう返事すればいいか戸惑っていたが、ギクシャクしながらもCが代わりに返事をし、Bは苦笑した。
そして、俺達は壁に立て掛けられたパイプ椅子に目を配り、徐に組み立てながらBのベッド脇に座る。
「驚かせたか?」
「冗談キツいわ」
「悪い」
当然ながら単調な会話はすぐに終わり、気まずい雰囲気に三人の顔が俯く。
しかし、このままでは埒があかない。
俺は勇気を振り絞ってBの自殺行為を咎めた。
「なあ、B。自殺とかマジでやめろよ」
俺が正面切ってそう告げると、どこか複雑そうに視線を反らしたかと思えば僅かに震えた口許を動かした。
「…あのさ、その事なんだけどさ」
Bはおずおずとテレビ台の方に置いてあるBのスマホを指差した。
「…映ってんだよ」
「「は?」」
俺とCは思わず声を揃えて口を開いた。
Bはスマホを手に取って一通り操作を始めると、意を決したように固唾を呑み、俺達を見据える。
「…倉庫行っただろ?そのときから何か変なの見えてさ。最初は気のせいかなって思ってたんだけど、やっぱり何度か変なのが見えてさ。でもお前ら二人とも何ともないみたいだし…俺がおかしいのかと思って」
「…それオカルトな話?」
神妙な面持ちで語るBにCが確認を取ると、Bはしっかりと頷いた。
そして、スマホ画面を向けると一時停止中の動画を見せた状態のまま、
「一応言っとくけど、自己責任だぞ。マジで俺の頭がおかしくなったとか思うなよ?」
いつになく真面目な様子で承諾を取るBを前にして、俺とCは僅かに緊張感を持って頷いた。
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