廃倉庫の白い顔
投稿者:A (4)
「…B?」
Bはスマホを片手に放心していたが、すぐに立ち上がると「マジ反省してるわ、悪い悪い」とひょうきん者宛ら片手で拝んで謝罪する。
明らかにBのテンションが普段よりおかしいと感じつつも、俺は何をするでもなく、ただ謝罪を受け入れて「あんまはしゃぐなよ?危ないから」とやんわりと話を終えた。
それからそれぞれ倉庫内を散策した所、充分に堪能したのか二十分そこらで一階の広場に集合し、俺達は倉庫を出た。
「いやー、結構いい感じの場所だったな」
「こういう退廃的な感じいいよな」
俺とCが感想を語らいながら建物の外に停めていた自転車まで歩いていると、やはりBが一人立ち止まっては廃倉庫を見上げている事に気がつく。
「またか?」
「あ、いや…」
Cが声を掛けると、Bは今度は即座に振り返って自転車まで駆け寄ってきた。
その帰り、本来だったら俺の家で撮影した動画や写真の品評会なんかをやるつもりだったが、自宅までの分岐点に差し掛かったところで、
「悪い、急用思い出したから先に帰るわ!じゃあな!」
と、俺達の返事を待つまでもなくBが別れた。
俺とCは「なんだアイツ。変なの」なんて首を傾げたものだが、その日はCと二人、俺の部屋で撮影した廃倉庫の品評会を始めて盛り上がったものだ。
そして、日曜日を挟んだ二日後、登校した俺はホームルームでBが入院したことを担任の口から聞き絶句した。
勿論、Cも同じクラスなので席に着いたまま互いに顔を見合わせたが、Cも驚いていた事から知らなかったようだ。
ホームルームが終わった後に教室を出ていく担任を捕まえて話を聞いた所、俺達がBと親しい間柄だと熟知していた担任は声を押し殺して俺達にだけ話してくれた。
「……言いづらいが自殺しようとしたらしい。こういう問題は難しいから慎重にな。ご両親の許可が降りれば見舞いにいってやれ」
担任は気難しい面持ちで俺達の肩を叩き、「すぐ元気になるさ」と激励してくれた。
あのBが自殺?
お調子者で悩みさえ無さそうなBが?
担任の話では昨日の内には意識は戻っているようだが、気性が荒くて手がつけられないとBのご両親から連絡が入ったそうだ。
俺とCは学校終わりにBの自宅に連絡し、御見舞いに行きたい旨をBの母親に伝えると快く受け入れてくれた。
俺とCは何度もBの自宅に遊びにいっているからそれなりに親しくしている。
その為か、Bの母親から「私じゃ何も話してくれないから、何か悩んでる事とかあるならそれとなく聞き出してくれない?」とも頼まれた。
夕刻、俺達はBが入院している病院にやってくると、ロビーで待っていたBの母親と合流し、その時には何と言っていいか分からず二人して「その、この度は…」とかまるで喪中みたいなお辞儀をしてしまい、母親に笑われた。
それから面会の手続きをした後、病室までの道中でつい二日前までは普通に遊んでいたことを母親に話した。
ただ、母親からはBが廃倉庫から戻った夕方辺りから様子がおかしくなったと聞いた。
俺とCはBの身に何が起きたのか考えながら病室にたどり着く。
「B、友達が来てくれたわよ」
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