留守番電話に残ったメッセージ
投稿者:津々 (42)
喪主を務めたA君の母親は涙ながらに妙な事をいいました。
「Aは生きている!絶対に生きている!だって…」と言いかけたところで親族に止められ後ろに下げられました。
私は何を言いかけたのかすごい気になりましたが、周りの反応を見ると「息子の死を受け止められない母親」というような感じでした。
私は葬儀後にA君の母親に引き留められました。
そして母親は私に「これを聴いてほしいの」と携帯電話を向けてきました。
携帯電話の画面は留守番電話でした。数秒後にピーという音の後に「もしもし母さん?俺なんだけど…」その声は間違いなくA君でした。
さらに留守番電話は続き「なんか、今まで迷惑ばっかかけてゴメン。最後に大きな迷惑かけるけど許してチョ。」と入っていました。
私は留守番電話を聞いている間、涙が止まりませんでした。
しかし、その後に涙が止まる事が起きました。それは、携帯電話に表示されている留守番電話の時間です。
さっき聞いたA君の留守番電話は、すでにA君が救急車で運ばれている時間帯だったからです。
なので、A君の母親は涙ながらに、「だからまだAは生きている」と何度も私たちに訴えました。
翌日から私たちの周りで異変が起こり始めました。その異変とは、A君と共通の友達数人が深夜寝ているとA君が現れるというのです。
A君を見た人は「最後のあいさつに来てくれた」と喜んでいましたが、中に「ただの夢だ」という人もいてあっという間にウワサになりました。
2,3日もすると「俺のところにも来た」「ウチでAがいつも座る席に座ってた」などA君が現れたという人は増えていく一方でしたが、私のところには現れてくれませんでした。
私は、その事がとても悔しくて、それを紛らわすように一人でバイクを流していました。
そんな時でした、いつもよりスピードが出ていたらしく大きなカーブでスリップしかけました。
その時でした、後部座先が「グッ」と重くなり絶妙な体重移動でスリップを回避しました。私はバイクを止めて後部座席や辺りを見渡しましたが、当然誰も居ませんでした。
その日の深夜に私の枕元にA君が現れました。しかしA君の顔はいつもと違い怒っていました。
A君は何か私に話しかけているように口を動かしているのですが口パク状態で何も私には伝わりません。ですが、A君の顔が怒っているので説教されている気分でした。
それでも私は、「A君に会えた。会いに来てくれた」という思いで、また涙が流れました。
そんな私はA君に「おれ、これからどうしたらいいかな?」と進学の事やA君を失った喪失感、全てを込めて聞きました。
するとA君は、「今回だけだからな」といい、集会場で見せてくれた満面の笑みで消えてしまいました。
私はA君が残した最後の言葉「今回だけだからな」の意味はあの日、事故りそうになった時に後部座席で助けてくれたのはA君だと思いました。
A君は私に口癖のように「お前は偉くなって、オレらみたいな奴らを雇ってくれよ」と笑いながら話していました。
若気の至りというとあれですが、脛に傷があると就職が難しいのです。
なので私は、A君への恩返しとして素行の悪い子たちの受け皿になれたらと会社を興しました。
あっちの世界でA君に会った時、胸を張れるように頑張るつもりです。
心霊いい話になりますね
泣けます…