あの時のかくれんぼ
投稿者:斑 (4)
私には少し年の離れた姉がおり、小さなころはよく家に友達をよんで遊んでいました。田舎で人口も少なく、各家がかなり離れているので小さな子供達が遊ぶと言ったら大体親に送ってもらうか、高学年の子は自転車で移動するかといったところでした。その為年上の姉の友達が家に来るととても嬉しく、疎ましがられるとわかっていても仲間に入れてほしいとくっついて回っていました。姉の友達は皆優しく、率先して年下の私を誘ってくれたものです。
近くに遊べるような建物や整備された公園はなく、また田舎によくある古く大きな家だったので子供達は大体近くの山で遊ぶか家の中で遊んでいました。当時は携帯電話も普及しておらず、一部の大人が持っている程度で子供達が持つなんて考えられない時代です。私達も遊ぶと言ったら近くを流れる川で魚を獲ったり、シロツメクサを編んだりと自分達で考えた遊びを楽しんでおりました。
家の中ではぬいぐるみを使ったおままごと、手遊び等を行っており、定番はかくれんぼでした。部屋も物もたくさんあったので隠れるのは楽しく、見つからないように息をひそめていると普段とは全く違った緊張感があるものです。人が見つからないと鬼役の子が一人で不安そうに家の中をしとしと歩くのも何だか不思議な気持ちでした。そんな風にかくれんぼをしていた日の事です。
その日も家には数人の姉の友達が来ていました。いつも遊んでもらう子は名前もわかるのですが、私が一緒に遊ぶ事を嫌がる子もいてそういった子とは接触しないので、特に名前も覚えません。確か二~三人くらい女の子がいたかと思います。いつも通りかくれんぼをしようという事になり、私は隠れる側でした。
古民家だったので部屋数は多かったのですが、メインの座敷は木戸を外せば大広間として使えるような間取りです。私は衣類の収納に使っていた奥の方の座敷へ行き、段ボールと段ボールの隙間に隠れました。頭の上には積まれていた衣服をかぶせカモフラージュも完璧です。じっとしていると前の部屋を鬼役の子が歩いていきます。
通り過ぎ、ふと通路を挟んだ反対側に目をやると同じくらいの男の子が隠れていました。男の子はとてもおとなしそうで、にこりともせず目をあまり合わせないように下ばかり見ていました。鬼に見つからないように話かけると、小さな声で答えてくれましたが聞き取れませんでした。
しばらくして、別の部屋でほかの子が見つかる声が聞こえて、ギブアップの声が聞こえました。私は男の子に行こうと声をかけると彼はしゃがんだままで、他の子たちが登場の遅い私にいら立ち始めた様子だったので先に行くよ?と声をかけて合流しました。
その後外で遊ぶ事になり、「待って、あの子がまだ中にいるよ」と言うと皆不思議そうな顔をしています。●●ちゃんは今日来ていないよ?といつも来る子の名前を言って優しく教えてくれる子に、男の子の事を説明しました。すると皆の表情が一気に曇り、やめてよと不機嫌そうに怒られました。どうやらそんな子は来ていないとの事。信じてもらえず立ち尽くす私を背に皆川へ向かいました。
その後建物内も探しましたが見つからず、似ている子も近隣や知り合いにはおらず、ただ一緒にかくれんぼをした時の表情や、一緒に行こうといった時の戸惑うような少し怒ったような顔が今でも時折浮かぶばかりです。
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