夏休みの侵入者
投稿者:ウェンディゴ (8)
小学生の頃の話だ。夏休みに父と和室でテレビを見ていた。
ふと畳を見ると1匹の蟻が歩いているのを見て「あっ!蟻だ!こんな家の中まで入ってくるんだ」と父と笑って話した。
次の日、同じように家族でテレビを見ていた。父は畳の上に新聞紙を敷いて、足の爪をパチンパチンと切っていた。
すると「おっ!またこんな所に蟻発見!しかも3匹も!」と新聞紙の上を並んで歩く蟻を足でつぶした。
母は「いやねー夏になると虫が出て」と嘆いていた。しかし、これまで家でハエや蚊以外見たことなかったので、なんだか不思議に感じていた。
ある朝、和室から母の「ぎゃゃああ」という声に驚き、和室に向かうとテーブルに置かれたコップを指さして叫んでいる。
そのコップには前日飲み残したオレンジジュースが入っていてジュースには大量の蟻が浮かんでいた。
その頃、住んでいたアパートは1階で、どこかにスキマがあって入ってきたのだろうと父は言った。
蟻対策のためにホームセンターで蟻退治グッズを買い込み、ネットで対策を調べた。
するとアパートの前の小さな庭に蟻の巣があるのではないかと考えられた。
そして巣を始末しない限り、夏中、蟻に悩まされそうだった。
さっそく家の中と庭に「蟻の巣ころり」という薬をまいた。蟻を甘い薬で誘い、その薬を蟻に巣まで運んでもらい、女王蟻も含めて全滅させるという作戦を実施。
すると作戦は的中。その日を境に蟻を見かけなくなった。
そんな事があったのを忘れていた夏休み後半の出校日。
私はのどが渇き、もってきた水筒をがぶ飲みした。
すると口中に広がるガサガサとした感触で、教室の中にも関わらず水筒のお茶を一気に吐いた。
なんと、そのお茶には大量の蟻の死骸が浮かんでいたのだ。
母は冷たいお茶を用意するため、前日に沸かして冷蔵庫に入れる前に水筒のふたをしないで、テーブルの上で冷ましておいたらしい。もしかしたら、その時に蟻の生き残りが入ったのかもしれない。
蟻の祟りだろうか。
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