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心霊

mikimikintanさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

ばあちゃん
長編 2021/02/03 00:49 3,425view

 これは私がまだ20代だったころに経験した初めての心霊現象のお話です。
当時、私は一人暮らしをしたばかりで、母方の妹夫婦が経営する小さな会社で事務員をしていました。土日になると6畳一間の狭いアパートに友達がたくさん遊びに来ることが良くありました。

ある日、学生時代からの友人だったA子と、ジャンクショップで知り合ったたくさんの友達の中の一人だったB男と三人で深夜にドライブにいくことになり、600km以上も先の目的地をめざしB男の軽自動車で走りだしました。

最初はワイワイ楽しくおしゃべりしていた私たちでしたが、何しろ出発したのが深夜0時だったので運転していたB男が眠たそうな目になっていました。私とA子はそれを見て、「ねえ?どっかパーキングに入って休もうよ!ねえ、ねえったら!」と口々に言いましたが、B男はふだんは気のいいやつなのですが、変なところに頑固で人の言うことに耳を傾けてくれませんでした。私たちはパーキングエリアが近づくたびに何度も何度もあそこで止まってくれ、そこで休もうと訴えましたが、運転手はあそこは自販機が少ないからやだとか、まだ全然眠くないから大丈夫だとか言って全然言うことを聞いてくれませんでした。でも明らかに運転しているB男の横顔は眠たそうでした。

文句のセリフも出尽くしてから五分もたたぬうちにもはや自販機すら見えなくなってきて、私はA子と二人、ほとほと困り果てていました。こんなに眠いのを我慢して運転してる人の車で夜中にドライブとか危なっかしくて本当にいやでした。でも、もう少しで目的地に着きそうだしなあ。などと、ぶつぶつ考えながら助手席に乗っていた私は、ぶすっとした顔で、前方に広がる畑や水田ばかり続く右手の景色と、左手に延々と続く白樺林をぼんやりとみていました。

すると次の瞬間、遠くに小さな明かりがチラチラしているくらいの田舎の風景の中、私はありえないものを発見して大いに違和感を感じました。左手の白樺林の中から、女の人が一人、すっと歩いてきたのです。(え?なんでこんなとこに女の人が?誰も住んでいないようなとこで?)

私はびっくりしすぎて目を丸くしてその20代後半くらいの女性を見つめていました。セミロングの髪を後ろでひとつに束ねたその人は、林から出てきたかと思うと、車の2m位先まで歩いてくると踵を返し、私たちの車と同じ進行方向に向かってゆっくりと歩き始めたのです。
その人が現れてから30秒ほどはたったでしょうか?私はおかしなことに気づきました。

その女の人と車間が全然狭まらないんです。一定の距離を保ちながら移動していたんですよ。

こちらはトロトロ走っていても車なので、時速50㎞以上は出ていました。でも相手は徒歩です。
私はその時、これが幽霊ってやつなのかもしれない!すごいものを見ているかもしれない!と一人で興奮して心臓をバクバクさせながら、おでこをフロントガラスにくっつけながら前を行く人を見つめ続けていました。見ればみるほど不思議でした。ライトに照らされてセピア色に浮き上がって見えるその人は、ちゃんと両足で普通に歩いているように見えました。セミタイトのスカートをはいていました。でも季節は秋で、私は買ったばかりの茶の細かい模様の入ったジャケットを着ていたというのにその人は上はブラウスか何か一枚だけしか来ていませんでした。時間は3時を回っていたと思います。長く見ていたような気がしても、ほんの1~2分の出来事だったと思います。その人は本当に私が見ている目の前で、足元からかき消すようにすうっと消えてしまいました。

「ねえ?今なんか見た?」

「今、女の人いたよね?・・・林から出てきたよね?」

「はあ?幽霊でも見たんじゃないの~?」

(そうだった。こいつはそういうのあまり気にしない男だったんだった)

まあ、地元に帰ってから友達に幽霊見たんだよって自慢でもしてやろう。そんなことを考えているうちに、私にも睡魔がやってきたらしく、知らぬ間に寝落ちしていたようでした。でも何かわからないけど、ふと薄目を開けたんです私。その時、頭はぼんやりしていたのですが、私の目は目の前までわあっとせまってくる電信柱をとらえていました。

(アレ・・・?危ない!!)

私は一瞬目をあけたのですが、次の瞬間には意識が飛んでいました。

「う、う~ん。。。」

何だか頭が全部痛い。。と思いつつダッシュボードから顔を上げた私を、横から覗き込むようにしてB男が見つめながら、「ああ。よかった~!私ちゃん生きてたんだ~。死んだかと思った」
などと勝手なことを言っていました。

「大丈夫大丈夫。後ろのA子は?」と振り向くと、ちょうどA子も目を覚ますところでした。

とりあえずみんな無事だったのを確認して安心しましたが、なぜか私だけ口の中が血の味でいっぱいでした。ジャリッという音がしたのでプッと吐くと、歯が出てきました。事故ったわりには
歯が折れたくらいですんでよかった。。。と思い、当時チェーンスモーカーだった私は、まずは外にでて一服でもしようとドアを開けたとたん、またもや気を失って倒れてしまったのでした。

次に起きたのは病院でした。なぜか麻酔なしでみんなでよってたかって私の前歯を抜こうとしていたので、「いがあああい!!やめふぇ~!!」と大騒ぎしました。ぶっちゃけ、その時は事故より痛かったです。まあ、私だけシートベルトもせずにシートをがっつり倒して寝ていたおかげで、ダッシュボードに顎をしこたまぶつけて歯が折れたり抜けたりして、前歯下は、歯が隣の歯にめり込んでいただけなんですけどね。あごもその時ざっくりと切れてしまい、ザックリと12針くらいで黒い糸なんかで縫われていました。(もう!女の子の顔なのに!!) 
でもその時、シートを倒していなかったら多分死んでましたけどね。

とまあ、そんな感じで日曜の朝4時頃に私たちは事故を起こし、休みなのに駆り出された近所の駐在さんに三人ともぶつぶつ文句がてら説教をされ、事情聴取を受けてから、B男の会社の人が車で迎えに来てくれてやっと帰路につきました。

当時の私は両親とはあまりうまくいっておらず、母の妹夫婦の元で働いていたため、とりあえずその叔母の家に送ってもらいました。血だらけのジャケットを着て、歯が抜けてちょっと何言ってるかわかんない状態の私でしたが、ふがふがいいながらも幽霊をみたことだけはみんなに言っておこうと思って詳細をつたえてみたところ、母が妙なことを言い出しました。

「ああ。それ、おばあちゃんだ。今朝は4時頃にドーン!!と大きな音がして目が覚めて、お母さんはずっとドキドキして起きてたんだよ。」と。

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