通せんぼ婆さん
投稿者:Bsen (7)
もうずっと前の話ですが、私は気軽な登山が好きで、時々近隣の山々へ出かけていました。朝から登って日中は山で過ごし、夕方になると下山するといった感じです。当時はニートだったので、暇つぶしには丁度よい過ごし方でした。
その日は稲荷神社のある山が目的地で、標高は300mにも満たないものの、山頂からは市街地が見渡せる絶景ポイントもあってお気に入りになっていました。平日でしたがハイカーの団体の姿もなく、人の気配はまるでなかったの気楽に歩みを進めていたのです。
そして山の五合目まで差し掛かったときでした。森の中の狭くて暗い登山道の真ん中に、何故かお婆さんが突っ立っていました。年の頃は70歳近いと思われ、その姿は普段着といった感じでしたが、じーっと私の顔を見てニヤニヤとしているのです。狭くて薄暗い登山道で、怖い笑顔の婆さんが通せんぼしながら、終始ニヤついているのです。
私はその様子に思わず固まってしまいましたが、婆さんは一向にそこから動こうとしません。狭い道を通りすがる必要があるのに、怖いお婆さんがいる。ニートな私にとって、その姿は人食いヤマンバそのものです。もう無理と思って4合目付近にあった獣道の別ルートから、山頂を目指すことにしました。そして遠回りしてようやく山頂にたどり着いてほっとした瞬間。
山頂のベンチで、怖い笑顔のにやつき婆さんが待ち構えているのを発見しました。
なんか「登山」と似てるな