かくれんぼ
投稿者:二十左衛門 (3)
「B君?」
僕が話しかけるとC君もそれに気づいたのか、
「B?その押し入れに何かあんの?」
と、少しいたずらっ子のような笑みを浮かべてのそのそと近づいていきました。
そして、C君が押し入れに手を掛けようとした刹那、客間の障子が開き、D君が戻ってきました。
「何してるの?」
「あ、何か押し入れが気になって……」
D君はいつも通りの朗らかな顔を浮かべ抑揚の無い仏のような声で喋りかけているのですが、どうにもオーラというか威圧感に充てられてしまい、僕も含め、C君は少しおどおどしたように答えたのです。
いつの間にかB君も我に還っていたのか、よく分からないといった曖昧な表情を浮かべて座っていました。
「慌てて片付けたから押し入れの中は荷物が詰まってるだけだよ、ほら」
このままでは家中の押し入れを探索されてしまう、そう思ったのか、D君は自ら襖を引いて押し入れの中を見せてくれました。
そこは言葉通り、客用の座布団やら何やら小物がぎゅうぎゅうに押し込まれている過密状態で、辛うじて僕達のような子供の体なら入り込める程度の隙間しかありませんでした。
D君の顔色をうかがうように僕達が押し入れを見ていると、用を済ませたA君が戻り、
「和式便所、ばあちゃん家のと一緒だった」
と、意味もなく笑顔で感想を述べるので、僕達も押し入れから向き直り苦笑しました。
するとA君は続けざまに「この家でかくれんぼしね?」と唐突な提案をし、B君とC君も「そりゃ面白そう」とかなり乗り気で同調し始めます。
当のD君は何やら考え込んだように一瞬だけ俯くものの、すぐに顔を上げて「いいよ」と肯定したものだから、僕は意外に思って目を丸くさせました。
「ただし、一階だけね。二階は親の寝室だから、何かあったらボクが怒られる」
「りょうかい!」
こうしてD君家の一階を使ったかくれんぼが開催される事になり、じゃんけんで鬼を選出すると、最初は僕が鬼になりました。
鬼は玄関で30秒数え、残りは30秒の間にD君家の一階の何処かに隠れる、それがかくれんぼのルールです。
30秒数えた後は「もういいかい」と大きく掛け声を出せば捜索開始の合図となり、制限時間10分の間に全員を見つけられなければ鬼の負けとなります。
僕は玄関で30秒を数えた後、「もういいかーい」と掛け声をあげると何も反応が無いことから捜索を開始しました。
先ずは客間に向かう縁側を通らず、玄関口から正面にある珠暖簾をくぐり台所へ向かいます。
昔ながらで少し広い空間に茶箪笥やらの収納棚が隅を囲い、中央に暗い配色のテーブルがあり、椅子が四脚ほどありました。
何となくキッチン横にある収納棚の扉が半開きになっている事に気が付いたので、何気なしに開いてみるとB君が背中を丸めて潜んでいるのを見つけて思わず笑いを噴き出してしまいます。
「B君みっけ」
「あー!くそー、やっぱわかったか」
頭をぶつけながら出てくるB君の奥を覗くと、恐らく頂き物の箱が押し込まれているようで、本当に辛うじて子供が入れそうな空間が空いてるだけでした。
見つかったB君は一先ず玄関で待機となり、僕は引き続き一階を捜索します。
結局なんだったんだ…不気味だ
顔が思い出せないなんて・・・・
ためはち