やがて峠の終わりの、道が開けたところまできたところで、車は停まった。
俺は石焼き芋屋の傍にバイクを停め、運転席を覗いた。
石焼き芋屋は放心している。
仕方がない。
大丈夫ですかと声をかけると、石焼き芋屋は一瞬驚いた表情をしたが、俺を普通の人間だと確認すると、安心した顔になった。
「大変でしたね」
「ああ、このあたりで幽霊が出るとは聞いていたんだけどさ、まさか自分がでくわすとわね。商売物も吹っ飛んじゃったよ、たはは・・」
石焼き芋屋は苦笑いをしている
「あの・・」
「なんだい?」
「もしよければ、残っている焼き芋があれば、売ってくれませんか?」
「かまわないよ」
石焼き芋屋は車外に出て荷台の芋を確認する。
「お、丁度ニ本残ってたよ。ほら、売れ残りだから300円でいいよ」
「ありがとうございます。」
石焼き芋屋と別れて
帰路につく。
流石に、さっきの峠道を通る気になれない。
交通量の多く、明るい道を通った。
・・それにしても冬のバイクは寒くてしんどい。
懐にしまった石焼き芋がカイロのかわりになってくれるのが支えである。
腹も減ってきた。
一本食べてしまおうか。
バイクを停めて、芋を食う。
甘くて美味しい。
すぐに食い終わると、タバコをふかした。
・・・そして、さっきのことを思い出す
いやあ、怖くも面白い体験だったなあ。
女の幽霊は追ってくるってことだったけど、噂ってのはコロコロ変わるからな。
芋も美味かったし。
良かった良かった。
まだ芋も一本残ってるから、これはまた後で・・・
・・・ここで石焼き芋屋のひと言が思いだされる。
面白い笑、オチまでよくできた良い話だと思います
芋食いたかったから着いてきたんw?