顔が歪むおじいちゃん
投稿者:ぴ (414)
小さい頃の話なのですが、私のご近所にはとても優しいおじいちゃんがいました。
私が一人で家の前で遊んでいると、いつも声をかけてくれて、遊んでくれるおじいちゃんでした。
私は小さい頃、父も母も働きに出ていて、近くに身内がいなかったので、一人で遊んでいることが多かったです。
近場に同じくらいの年代の子がいたらいいのですが、残念ながらそんな小さな子もいなくて、仕方なく一人で遊ぶことが多かったです。
そんなときに、よくこのおじいちゃんが話相手になってくれました。
顔はもう薄っすらぼんやりとしか覚えていないのですが、いつもにこにこして優しかったことを覚えています。
私が「だるまさんが転んだがしたい」というと、いつもこのおじいちゃんが付き合ってくれて、遊んでくれていたのです。
家の前で折り紙を教えてくれることもありました。
そんなおじいちゃんですが、私は嫌なところが一つだけありました。
いつもにこにこ優しそうなのに、近くに人が来るとなぜか顔を歪ませる癖があったんです。
私はその癖がなんだか嫌で、よくおじいちゃんに「変な顔しないで」と言っていました。
今考えるとすごく失礼ですよね。
別に好きでしていたわけじゃないかもしれないのに、子供だった私はあまり深く考えずよくこう言っていたと思います。
だけど、それをいうと近所のおじいちゃんは「ふぉっふぉっ」と高らかに笑って、「すまんなぁ」と謝ってくれました。
そういうおおらかで朗らかなおじいちゃんでした。
私はいつしかこのおじいちゃんにとても懐くようになって、声をかけてもらうとすごく喜んでいました。
私にとって家族の次に大切と思うくらい、大好きなおじいちゃんでした。
私がこのおじいちゃんとの思い出で一番覚えているのは、野良犬から助けてもらったことです。
昔から好奇心旺盛で動物が好きだった私は、野良犬も野良猫も見つけたらなでたり、追いかけたりすることがありました。
今考えたらとても危ないことです。
しかし、当時の私は犬を危ないと認識しておらず、とにかく好奇心いっぱいに近寄ってしまったのです。
そのせいで怒らせてしまったのか、ある日追いかけていた野良犬にが怒ってのしかかられたことがあったのです。
明らかに野良犬は私に嚙みつこうとしていて、あの日の恐怖は今も忘れられません。
そんなときに、一番に見つけてくれたおじいちゃんが私を助けてくれました。
どうやって見つけてくれたかまでは分からないけど、私にのしかかっていた犬が急に「キャン」と鳴いて、弾き飛ばされたみたいに転がりました。
多分おじいちゃんが体当たりしてくれたんじゃないでしょうか。
すぐに起き上がって野良犬は低いうなり声をあげてまた飛び掛かってきそうになっていましたが、おじいちゃんとしばらく睨み合って尻尾を丸めて逃げていきました。
あの時は本当に怖くて、おじいちゃんに抱きついて、わんわん泣きました。
もしおじいちゃんが助けてくれなかったら、私は噛み殺されていたかもしれません。
そのくらい凶暴な犬で、それ以来学習した私はむやみに野良犬や野良猫に近づかなくなったのです。
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