相席した人の様子がおかしい
投稿者:ぴ (414)
私はその日実家に帰省するために、電車に乗りました。
地元暮らしが長かったので、なかなか転勤先の生活に馴染めず、体調を壊して療養のために実家に帰ることになったのです。
仕事もうまくいかないし、なにより精神が弱っていて、もう身も心もくったくた。
下手をすれば、電車のホームに飛び込んでしまうくらいの不安定な精神だったと思います。
そんな時に、私は電車で奇妙な体験をしたのでした。
私が乗った電車は一度も乗り換えることなく、地元の駅まで送ってくれる電車でした。
指定席ではなく、いつもどおりの自由席なので、なるべく時間よりも早めに電車に並びました。そうしなければ、席がなくなってしばらく立ち乗りしないといけない可能性があったからです。
荷物も多いし、席が空くまで待っているのは精神的にもきついと思い、私は急いで準備して駅までやってきていました。
しかし電車に並んでしばらく待っても、その日は不思議と人が少なかったです。
電車に乗るタイミングもあったのかいつもの半数も人がいなくって、急いで来なくても良かったと思いました。
そうして私は思っていた以上に焦ることなくすんなりと電車に乗ることができ、どちらかというと後ろよりの奥の席に座ったのでした。
あまり人と関わりたくなかった私は、この様子だと一人で座れるかもしれないとほっとしました。
しかし、残念なことに最後に電車に乗り込んできた人が他に空いている座席があるにも関わらず、私の隣の席に座ったのでした。
私の隣の席に座った人は、乗りこんできたときから、どこか様子がおかしい人でした。
見かけはとくに問題のないごく普通の若者に見えるのですが、ぼそぼそと何か一人でしゃべっていてかなりやばそうな雰囲気がありました。
相席した私へのあいさつは一つもなく、ただ隣に乗り込んで、ぶつぶつ言っているのです。
私は変な人と相席してしまったなと、とても不安な気持ちになりました。
そんな不安そうな顔を私がしていたら、前の席のおばあさんがこちらに振り向いて、「具合が悪そうだけど大丈夫?」と心配そうに聞いてくれました。
私の前に座っていたのは優しそうな老夫婦で、すごく大きな荷物を持って電車に乗っていました。
白髪がかった髪のおじいさんとおばあさんなのですが、こちらを向いて私を心配してくれているようでした。
もともと仕事の疲れで、顔色が悪い自覚のあった私は咄嗟に「ちょっと疲れているだけなので、大丈夫です」と笑って誤魔化しました。
それからしばらくはなにごともなく、電車の揺れを感じながら、窓の外を眺めて過ごしました。
実家と行き来するのに何度も何度も通ったことがある道のはずですが、なんだかいつもと景色が違うような気もしました。
いつもよりも少し景色が輝いて見えたし、神聖な感じがしました。
ちょっと心が病んでいるので、そのときは心の病のせいでいつもと違って見えるのかなと思っただけでしたが、ちょっと感動するほど綺麗に見えました。
私がそのように景色に目を奪われて夢心地になっているときも、隣の人はずっとおかしかったです。
だって俯いてずっとぶつぶつ独り言を言っているのです。
その姿はとても不気味で、内心怖かったです。
自由席ということもあり、何度か他の席に移ろうと思ったのです。
しかし、運悪く奥の窓側の席に座っていた私には席移動はちょっと荷が重いと思いました。
今席を移動すると、なんだかこの人を避けているよう見えるじゃないですか。
すでに様子がおかしいので、あまり相手の気の障ることをしたくなかったのです。
穏便に過ごしたかった私は、その後しばらく仮眠をとることに決めました。
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