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不思議体験

深幸〜みゆき〜深淵を覗くさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

オーナー
短編 2021/01/24 01:57 1,876view

人生五十年以上も生きていると、稀に不思議なことが起こるものです。

私の前職の頃の話です。
個人経営に毛が生えた程度の会社で事務職をしていた私は、もう少し収入があればと願い、他にもバイトをすることにしました。
そのバイト先のオーナーさんは、私達が住んでいる県の発展を願って土地を寄付されたという一族の方でした。金持ち喧嘩せずというのでしょうか、おおらかというか破天荒というか、いくつかの飲食店や不動産を営んでおられる中に私も入れていただき、仕事とはいえ割と自由に楽しい勤務形態でした。

ある日の夕方、オーナーから携帯に電話が入り
「スナックをまた一軒オープンさせたから、今から出ておいでよ」
とのお誘いを受けましたが、下戸で、ましてや小さなこどものいる主婦の私は丁重に辞退させていただきました。
帰宅し、浴槽に湯を張りつつ洗濯物を畳み終え、夕飯を準備して家族に食べさせ、お風呂の湯加減を確かめ…バタバタと家事をこなしているうちに、なんと私は携帯を水没させてしまったのです。このとき、何故か
「オーナーに怒られる…」

としか思い浮かびませんでした。他にいろんなひと達からももちろん連絡が入るのに、思い浮かんだのは何故かオーナーただ一人だけでした。
翌日の昼休み、携帯ショップに出向き修理期間中は代替機を借りることが出来ました。ホッとすると同時にまたもオーナーのことが頭に浮かび、直ぐにメールを送り電話をかけたのですが出られません。事務所もお店も誰も出ません。お忙しいかただと頭で解っているのに嫌な予感が胸を過りました。只事じゃないという確信に近い胸騒ぎ。でも根拠は何も無いのです。
本職の会社に戻り、ハローページの分厚い電話帳で病院を探し、直感的に目に飛び込んできた病院に電話をかけ
「そちらに□□から○○さんが見えられてると思うのですが、いらっしゃいますか?」
と伝えると、病院側は困惑した様子。当然の反応です。確信を打ち消したい一心で努めて冷静な口調で
「もしまだいらっしゃるようでしたら、伝言だけ伝えていただけませんでしょうか?…お願いします」
病院側から待つように指示され、随分長い時間、保留の音楽が聞こえていました。次に電話口に出たのは看護師長でした。
「普通は絶対にお教えしないのですが、急なことでしたので…昨夜、救急搬送をお受けしましたが、そのまま意識が戻ることはなくお亡くなりになられました」
「嘘ですよね?

そう言って驚かそうって、横でオーナーから言われてるんですよね?」
と震える声で尋ねましたが、私自身が頭のどこかでああやっぱり、と分かっていました。
病院との電話を切ると、私は直ぐにまた分厚い電話帳を繰り斎場を探すと、ここだと思った一軒に電話をし
「□□の○○さんの告別式の予定を教えてください」
と切り出しました。
「急なことでしたので、まずご家族だけの密葬という形をとられることになりました。云々…」
斎場なんて、私達の区だけでもかなりの数あるのに、病院に続いてここもビンゴでした。

夕方、オーナーのお店に向かうと、お店の前にはいくつかの花束が置いてありました。現実と向き合って茫然としている私に、向かいのオムライス屋のご夫婦が声を掛けてくださり、状況を聞くことが出来ました。
看護師長から電話で聞いた通りの内容でしたが、新たな情報もありました。
この場所のお店のオーナーになられたかたの急逝は、これで続けざまに三人目とのことでした。

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コメント(3)
  • なんの店のオーナーなんでしょうか?突拍子もない展開で、よくわかりませんでした。

    2021/01/24/03:37
  • 色んな店のオーナーって読めば分かるけど。
    怒涛の展開も普通に分かる。

    オーナーさんと作者は深い縁があったんだね。
    虫の知らせのハイパーバージョンだ。

    手を出してはいけない土地もあるよね。

    2021/01/24/20:38
  • なるほど!
    虫の知らせのすごいやつなんですね。
    そこまでなにか前世の因縁浅からぬ方? なのであれば、その新しい店を出すときにこそ知らせてほしかったですね……

    2021/01/30/15:58

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