「次はお前だ」
投稿者:足が太い (69)
その声は子供というよりは老人のようなしゃがれた声で、やけに間延びした話し方も相まって、恐ろしい雰囲気を醸し出していました。
「開けろ、開けろぉ~あああ」
「次はお前だぞ、お前の番だぁ~」
「開けろぉ~、開けろよぉ~」
「あああ、あ開けろぉ~、開けろ~」
「開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ開けろ開けろああああ」
恐怖で思わずその場にうずくまり、耳を塞いで子供の声を聞かないようにしますが、子供はドンドンとドアを叩きながらひたすらに開けろ、次はお前だと繰り返します。
この場を切り抜ける方法は何かないか…、そう思って部屋を見渡すと、ある物が目に入りました。
それは、以前葬儀に参列した際に貰ったお清め塩の残りです。
急いで塩の入った袋を手に取り、片方の手の平に塩を出して、勢いよく玄関ドアを開けてそのまま外にいる子供の幽霊へ向かって塩を投げつけました。
子供は、私がドアを開けたことに嬉しそうな顔をしましたが、塩がかかった瞬間顔をぐにゃりと歪ませたかと思うと、「ぎいいいいぃいいぃぃ」という金切り声を上げて消えてしまったのです。
後日談ですが、夜中にあの道路を通りがかった時に、たまに例の子供の幽霊を見かけることがありました。
子供の幽霊は地面にうずくまっていることもあれば、ぼーっと立ち尽くして道行く人を恨みがましい目で見つめていることもあります。
ある時は、通りがかった人の後をついていく姿も見かけました。
私にも気づいていましたが、あの夜に投げつけたお清め塩が余程効果があったのか、私と目が合うと怯えるようにブルッと体を震わせて消えてしまうので、あの日以降、子供の幽霊の被害に遭うことはありませんでした。
今はあの町から遠く離れた場所で暮らしているので、子供の幽霊がいる道路を通ることもありません。
なので詳しいことは分かりませんが、恐らくあの子供の幽霊は、今も道路の片隅にいるのだと思います。
子供が口にしていた「次はお前だ」という言葉の真意は未だにはっきりしていませんが、恐らく自分と同じ目に遭う人間を待ち構えているのでしょう。
子供の幽霊だからといって油断してしまうと、恐怖を体験することになります。
事故現場で幽霊を見かけたら、うっかり声をかけてしまったら、その幽霊が家までついてきてしまったら、自分に呼びかけて来たら…、決してドアを開けてはいけません。
ドアを開けてしまえば、どんな恐ろしい目に遭ってしまうのでしょうか…。
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