母親の愛

同級生の友達、Ｂ子のお母さんはとても良い人だった。
いつも気さくに声をかけてくれ、遊びに行くと手作りお菓子までくれた。
Ｂ子のお弁当はいつも凝っていて、羨ましかった。

高校を卒業しそれぞれ就職した頃、Ｂ子から父親が倒れたと連絡が来た。
全身マヒになってしまい、母親がしばらく自宅介護をしていたが結局施設に入る事になった。
献身的な母親はそれをとても残念にしていたそうだ。

Ｂ子は末っ子で、上に二人姉が居る。
長女は遠方に嫁いでいて、次女は働いて実家にいるものの母親とは折り合いが悪く、一言も口をきかないし顔も合わせないそうだ。

悪い事は続くもので、長女は離婚してしまった。
母親は実家に帰るように言ったそうだが、都会の方便利なのでそのまま元の家に住む事になった。

しかし一切の連絡が取れなくなってしまった。

Ｂ子は近くの市で一人暮らしをしていたのだが、その会社が潰れてしまった為に実家に帰ってきた。
次女と母親は相変わらず一言も喋らず憂鬱にはなるものの、失業手当を貰いながら遊んで暮らしていた。
母親のご飯は相変わらず美味しい。
四ヵ月後、ようやく念願の仕事を県外で見つけて、家を出る事になった。

いよいよ引っ越す３日前の事だった。
Ｂ子は家の階段から落ちてしまい、脊髄を損傷してしまった。
治療には時間がかかり、もう普通には歩けないと言われて当然会社は辞める事になった。

そんな状況なのに心配してくれるのは母親だけで、姉二人はまったく何も言って来なかったという。

ある日買い物に出たら、Ｂ子母に会った。

父親もＢ子もあんな事になり、
「大変でしたね…」
というと、母親は苦労し過ぎて老け込んでしまった顔を、笑顔で歪ませこいう言った。

「家族はずっと一緒が良いのよ…」

私は何故か鳥肌が立った。
母性愛溢れる母親。
家族の世話をしたくてたまらない。

全部、思い通りになってないか？
長女以外に。
「普通のお母さん」なら、何故長女と次女は完全無視する？