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心霊

足が太いさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

幽霊の訪れるコンビニ
長編 2022/03/17 23:40 3,370view
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私が思わず後ずさると、その分距離を詰めるように女性が近づき、「この子を助けてくれませんか」と、繰り返します。
とうとう耐えられなくなり、大声で叫んでバックヤードにいるA子さんに助けを求めようとした時、何かを察したのか、A子さんが「大丈夫!?」と走ってきてくれました。
A子さんに腕を掴まれ、2人してバックヤードに駆け込んで勢いよく扉を閉めると、その後すぐゴン!ゴン!ゴン!ゴン!という扉を叩く鈍い音とともに、先程の女性の「開けろ!開けろ!」という怒鳴り声が聞こえてきました。

私「た、助かりました…ありがとうございます」
A子「ううん、間に合ってよかった。あの幽霊は初めて見たけど、今まで見てきたのと違ってやばそうだったから…」
私「どうしましょう…。このままバックヤードに隠れていたら、諦めて帰ってくれますかね?」
A子「どうだろうね、あの様子だとそれはなさそうだけど…朝になったら消えてくれるかな」

幸いと言っていいのか、時刻は4時を過ぎたところで、もうあと1時間も我慢すれば太陽が昇ってきます。
今まで通りなら、太陽が出る頃には不思議と幽霊も来なくなるので、お客さんが来たらすぐ出ることにして、朝までバックヤードに避難しておこうということになりました。
A子さんは何か作業をしていたようですが、扉のすぐ向こうには恐ろしい幽霊がいるので「仕事をしている場合じゃない」と言って、椅子に座りじっと考え込んでしまいました。
私もやることがないので空いている椅子に座り、扉を見ないようにしながらひたすら耐えました。

女性の幽霊は私達が出て来ないことを悟ったのか、今度は声色を変えて「ねぇ、開けて、開けてください、助けてください、ねぇ、子供を助けて、助けてください」と、話しかけてきました。
か弱く、今にも倒れそうな声で話しかけてくるので同情して扉を開けそうになりましたが、A子さんはそんな私の気持ちを察したのか、「駄目よ、絶対に開けちゃダメ」と力強く言って止めてきます。
か弱いフリで同情を誘っても扉を開けないことを知って、女性の幽霊はまた、激高したように叫び狂いながら扉を叩き出しました。

あまりの激しさに思わず耳を抑え、太陽が昇るまでの1時間をひたすら耐えきったのです。

そして5時になり、太陽が昇ると、女性の幽霊は最後に「…覚えてろ」と言った後、消えたのか扉を叩くことも叫ぶこともしなくなりました。
そーっと扉を開けて店内を見渡すと、そこには誰もいませんでした。
A子さんも「やっと消えた…」と憔悴した顔でそう言いながら、バックヤードに置いてあった塩を店内や出入り口に撒き始めました。

今までは攻撃的な幽霊が出なかったこともあり、とくにお祓いをしなかったそうですが、今回はさすがにまずいと思ったらしく、女性の幽霊が出た数日後にお祓いが行われました。
効果があったのか、それ以降、そのコンビニで幽霊を見かけなくなりました。

この世に強い恨みや未練を持つ幽霊は、それに比例した強い力を持つと聞いたことがありますが、あの女性の幽霊はどれ程に恨みや未練が強かったのでしょう。
あの時、扉を開けていたら…どんな恐ろしい出来事が待っていたでしょうか。

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