怖がりの姉と鏡の中の自分。
投稿者:くま (4)
私には姉がいる。
仲の良さはと聞かれたら、二人して普通と答える程度。
微妙に歳が離れていたこともあり、一緒に出掛けたりするほど仲良しではないが、かといって険悪でもない、本当に普通の姉妹。
ただ、私が小学生の頃、一時期家では姉にべったりとくっつかれていた。
理由は単純で、当時流行っていたアニメやドラマがほとんどホラーやサスペンスモチーフだったせい。
学校でみんなの話題についていきたいけれど怖がりの姉は、怖いのが嫌いなのに薄目涙目で頑張ってそれらを見ていた。
そんな怖がりの姉が、怖いものを見終わった後はひとりでいたくない為に、あまり怖いという感覚が育っていなかった鈍い私を家中連れ回していたからだ。
アニメやドラマを見る時も一緒。
お風呂も一緒。
寝る前のトイレはドアの前で待っていて、あんまり怖い時は姉のベットで抱き枕みたいにされて寝た。
妹というよりも、ペット感覚か、もしかしたらぬいぐるみ代わりに近い扱いをされていたのだと思う。それも別に嫌だとは思わなかったというか、あんまり気にしてなかった。
そんな私たちだったが、ある日些細なことで喧嘩をした。
それこそありがちな、狙ってたおかずを取った取られたレベルの争い。
親に怒られて無理やり仲直りさせられたけれど、腹の虫が治まらなかった私は、姉を驚かせてやろうと企んだ。
ちょっと前にみたバラエティ番組のホラー特集で、悪霊に取り憑かれた友人をお祓いして貰う云々という再現ドラマをやっていたのだが、取り憑かれた人の演技が凄かったから、真似しようと思った。
悪霊に取り憑かれたという優しそうな人が苦しみ出してうずくまって静かになったと思ったら、一転して迫力満点の鬼のような顔で人に襲いかかる……そんな場面をみて、姉が悲鳴を上げて泣き出したのだ。
私がいきなり、あのテレビの人と同じような怖い顔をすれば驚くに違いない。
姉が泣いたら思いっきりバカにしてやる、なんて意地の悪い事を考えながら、両親の寝室にある母親の化粧台に向かった。
家の中で一番大きな鏡を前にして張り切った私は、怖い顔の練習をしようと延々と変顔を続けた。
あの人はもっと白目っぽくなってた。
もっと口は大きく開いてた。
などなど、おバカな子供はおバカなりに、テレビでみた怖い顔を思い出しながら、一生懸命に怖い顔の練習をした。
延々やりすぎて顔が引き攣りそうになってきたあたりで、これはと思う怖い表情が出来た。
首を傾げて顎を少し上げて。
目はなるべく大きく見開いて思いっきり下を見て三白眼にして。
口は半開きで思い切り口角を上げて笑うような、けど歯をむき出すような笑い方にして。
イメージは般若のお面をもっと大袈裟に、もっともっと気持ち悪くしたような顔。
自分でも背筋がゾワッとするくらい怖くて気味の悪い顔が出来て、私はこれで姉を泣かせてやろう! と怖い顔をやめて決意表明するみたいに鏡をみた。
まだ、怖い顔のままの私が写っていた。
ポジティブに考えよう。
仲直りさせたかったご先祖霊の仕業。
しかし荒療治過ぎる(笑)トラウマものだわ。
あと仲いいじゃん!
筆者です。
ご先祖さま(仮)、荒療治すぎませんか……(´;ω;)
姉妹仲については周りの兄弟姉妹仲がもっと良かったので、これくらいだと普通かなと思ってました。
仲良し認定いただけて嬉しいです。
世の中の鏡っていう物には悪戯好きな精霊が宿ってるらしい
筆者です。
鏡は神器に数えられる程聖なる物である一方、目に見えるもの以外も映す、鏡の中には人ならざるモノが住む……など、色々言われているようですね。
この体験も悪意のない精霊のいたずらであって欲しいです……。