呪いを解き放ったかもしれない
投稿者:煙巻 (8)
俺の祖父の家は、大正から建てられた古い家屋で、随分と草臥れた瓦屋根は周囲の家と比較すれば、悪い意味で際立っていた。
祖父も俺から見て曾祖父から受け継いだ居住だった為、生まれ育った我が家に違和感を覚える事がなく、小さな補修程度でリフォーム等は一切行っていなかった。
俺が10歳の頃だったか、年越しを祖父母と過ごす為に両親と俺の三人で訪問し、大晦日には居間にある大き目のコタツを5人で囲み、すき焼きを食べる。
大人数になれば自然と鍋物が増え、和気藹々と語らいながら過ごす年越しはそれほど悪くなかった。
除夜の鐘が鳴り、一年が終わった憂いと新年が始まるワクワク感で自然と胸が躍ったものだ。
祖父母は意外と遅くまで起きていられる性分で、父と日本酒を嗜んで顔をタコのように赤くさせていた。
母と祖母は、俺達が食い散らかした食器類やゴミの後片付けをしながら談笑していて、俺はというと見たい番組がなかったのでコタツに潜り込んで野球漫画を読み進めている。
と言っても、内容に夢中になっているわけでなく、せっかく遅くまで起きる事が容認されているのだから何か刺激が欲しかったので、何か暇つぶしはないものかと探った矢先に見つけたのが漫画本だった。
「ちょっとトイレ」
何分田舎なので外気が冷たく、古いながらエアコンが付いているにも関わらず障子から注ぐ風が尿意を掻き立てた。
「おう、場所わかるか?」
「大丈夫」
祖父はシラフなのか泥酔しているのか判別できない口調だったが、父はどうみてもべろんべろんに酔い潰れていて、それでもコップに注がれるものだからちびちびと啜っている。
居間を出れば縁側が続く。
庭との境にガラス窓の隔たりがあるが、さほど月明かりが無いせいか、薄っすらと草木が見える程度だった。
廊下の最奥は闇夜に続く口腔のようで、そこに至るまでの頼りは居間から漏れる僅かな灯火の残滓となる。
母屋は屋敷と言えるほど平屋にしては大きく、間取りも多い。
一部屋一部屋の空間が大きく設計されているのもあるが、入り組んだ縁側から厠までの距離はちょっとした散歩だ。
流石に厠の中は洋式便所に改装されていて、照明や洗面台は近代的で清潔なものだった。
トイレを済ませ再び廊下に出れば、電気を消したせいで真っ暗な世界が広がる。
まあ、すぐに目が慣れ足元くらいは認識できる程度だが、やはり子供ながら恐怖心は巡るものだ。
縁側の突き当りに接した時、俺はふと視線を庭先へ移す。
今いる家屋は母屋になり、実は渡り廊下を通した先に離れの小さな屋敷の離れが建っている。
離れの屋敷と言っても、向こうは母屋より年季の入ったオンボロな八畳二間ほどの平屋で、祖父母からは荷物置き場の蔵として活用しているから無暗に入るなと躾けられていたため、どうにも意識を引っ張られる。
板張りの軋みを踏み込むように、俺は渡り廊下から離れへと赴いた。
「鍵かかってないじゃん」
離れの玄関口と言っていいのか、古臭い木製の引き戸は胴なのか鉄なのか錆び臭い格子と合わさったもので、施錠には南京錠が使われていたが空きっぱなしの状態だった。
いくら庭内とは言え、不用心だ。
と建前にして、内部の様子を確かめてみようと軽く片扉を開き覗き見る。
証明がないのだから当たり前だが暗くて何も見えない。
面白かった
もっと評価されてもいいと思う
面白かったし怖かったしオチも最高だったけど、なかなか読みにくい文章だった。
それすらもそれも不気味さを演出していたけど
構成も文章もしっかりしているし、話自体も、時系列にそって流れているため分かりやすく読みやすかったです。結局、呪いは解き放たれたのか、祖父の代をもって終了したのかわからぬまま結んでいる点で、逆に不気味さと呪いの連鎖への不安や怖れを暗示しているように感じましたが。
うむむむむむむむ…
時代背景がよく分からんかった(´・ω・`)
戦後って第二次世界大戦?戊辰戦争とかなら時代背景想像出来るんだけど