会ったことはないが覚えている男性の顔
投稿者:羽根物 (3)
短編
2022/02/22
00:32
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眠っていると何やらぶつぶつ、ぶつぶつと話し声が聞こえて目が開いた。
すると目の前に自分の顔を上から覗き込む顔が見えた。
メガネをかけた40歳代くらいの、あごから頬の方まで青っぽくひげの剃り跡が見える男性だった。
男性の顔には全く心当たりがない。
男性の顔の周りは非常に明るくて、真っ白に感じられる程だったが不思議な事にまったくまぶしくない。
男性は何やら人の顔をしげしげと観察してぶつぶつとつぶやいている。
日本語らしいのだが、まったく聞き取れない。
そしてなぜか誰かに向かって呟いているのが分かった。
寝ている自分の足の先の方に誰かがいて、何か記録を取っているような気配がする。
なぜ気配だけなのかと言えば、実は自分の身体をピクリとも動かすことが出来ない。
開いた目の前にいるメガネの男性の顔しか見えないのだが、足の先の方に確かな気配を感じるのである。
その状態が5分程続いただろうか、突如視界がゆっくりと真っ白にぼやけていきついには真っ白になってしまった。
不安を感じていたら、今度は急に真っ黒に身体が落下したような感覚に襲われた。
非常に驚き、「うわぁ!」と声を上げて飛び起きた。
今度は身体が動き起き上がれた。目を開くといつもの自分の部屋だった。
あれからもう40年近く経つが、あの男性の顔を覚えている。そしていまだに会ったことはない。
一体、何だったのだろうか。
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