嘆きの肖像画
投稿者:繭 (42)
短編
2022/02/18
20:39
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私が通っていた高校の美術室には美しい少女の絵がありました。
モデルの素性は詳しくわかっておらず、うちの学校の生徒とも教師の娘とも噂されていました。
高1の夏休み、私は美術室を訪れて絵を描いていました。その日来ていた部員は私一人で、とても静かだったのを覚えています。
「あ~疲れた~」
休憩を入れようと伸びをした瞬間、イーゼルに立てかけられた少女の肖像画が目にとまりました。
すると少女の表情に微妙な変化が生じ、不愉快そうに目を細めるではありませんか。
「ひっ!?」
衝撃的な光景を目の当たりにしたショックで席を立ち、全速力で逃げだしました。
しかし急いでいた為忘れ物をしたのに気付かず、翌日改めて取りに戻るはめになりました。
再びあの絵に睨まれたらどうしようと恐れ慄き、そうっと美術室に忍び込んだ所、小さく掠れた声に告げられました。
「眩しい」
「ッ!?」
息を呑んで顔を上げると、イーゼルの上に展示された肖像画とまたもや目が合ってしまいました。
ちょうどカーテンが開いており、窓際の絵にまともに日が当たっています。
ひょっとしてと思ってイーゼルを移動させると、肖像画の少女はにこりと微笑んで動かなくなりました。
彼女が目を細めたのは直射日光が原因だったんだなと腑に落ち、ホッとしたのを覚えています。
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