深く暗い海の底へ
投稿者:すもも (10)
先生は、私が気を失っているだけということに安堵し、処置を施した後は私の両親に連絡を入れるため施設の電話を借りに席を外していて、今は二人が看病をかってでているとのことでした。
「でも、無事でよかったよ」
「ごめんね、すぐ見つけてあげられなくて」
二人は泣きながら私の手を握ってくれました。
まだ意識が覚醒しきれていないせいか、頭がぼーっとして考える能力がなく、私は一旦「ありがとう」と述べた後、再び眠りにつきました。
その後、私は迎えに来た母に連れられ皆より先に帰宅することになりました。
先生が母に頭を下げる横で、私はAちゃんとBちゃんに別れの挨拶を済ませ、また今度遊ぶ約束をして車で帰りました。
「私ちゃん、本当に大丈夫?」
私は大丈夫だよと母に相槌し、後部座席で横になり一息つきます。
こうして横になれば、海で溺れていた光景が目に浮かんでくるようで、私の足に絡まっていた海藻のことが気になってきました。
突然出現した海藻と、それから助けてくれた手。
あの時の光景を思い出していると下半身に違和感を覚え、私はふと足首を見て、ぎょっとしました。
「えっ」
私の足首から脹脛にかけて、不気味にもうっすらと小さな手形が浮き出ていました。
私はその手形があの時助けてくれた細い腕の主と同一だと考えた途端、それが精神的な負担となったのか、再び睡魔に襲われてそのまま眠ってしまいます。
そんなことがあった数日後、完全復活を遂げた私は、自宅にAちゃんとBちゃんを招待して夏休みの宿題に取りかかっていました。
まだ8月に入ったばかりで焦る必要もないけれど、後で追い込まれないよう早めに片付けようとAちゃんが提案したのです。
何気ない会話からちょっとした恋話を挟みながら、着実に消化していく課題の山々。
喋り疲れたのか、少しだけ沈黙が支配する、筆の走る音が耳心地良く思い始めていた時に、Bちゃんが口を開きます。
「そういえば、私ちゃん。海で溺れたときのこと覚えてる?」
その言葉に何故かAちゃんが鋭い反応を見せ、Bちゃんを睨みあげます。
一瞬、私がトラウマになっているのではとの気遣いだと理解し、私は飄々と「すこし覚えてるよ」と言い、
「あの時は心配かけてごめんね。看病してくれてありがと」
と二人にお礼を言えば、二人は複雑そうに顔を歪め、不格好な愛想笑いを見せました。
「何か夢とか見てなかった?」
「夢?」
私は顎に手をあてて考えます。
途端、何やら黒い渦のような靄が脳裡を過り、まるでこれ以上思い出すなと言わんばかりに頭痛が起きたのです。
「私ちゃん!」
「ごめん、ちょっと頭痛が。それより、なんで夢?」
子供の純粋さが恐ろしい未練のようなものになってしまうのかな
ほっこり話だと思ったら、後半めっちゃ怖かった
めっちゃ怖くて読み応えあった。
ていうか作者さん中3!?