深く暗い海の底へ
投稿者:すもも (10)
そして、Bちゃんは若干後悔するような面持ちで語り始めます。
私が溺れた日のこと。
先生達大人がぐったりとしていた私を救助した後、診療室に運び処置を行っていたのを遠目から二人は見ていたそうです。
私はというと、溺れる前に気を失っていたことが幸いにしてそこまで水を飲んでいないことがわかり、安静にしたまま眠っていました。
その間に先生達は事故が起きた事で遊泳の中止や、私の親への連絡など慌ただしく奔走しており、念のため私の監視役としてAちゃんとBちゃんが付きっきりで側に居てくれたのでした。
しかし、しばらく経つと静かに寝息を立てていた私が急に呻き声を上げたので、Aちゃんは私の肩を揺すったそうです。
すると、私は悲痛な表情を浮かべ、
「Oちゃん…、Oちゃん…」
と、怖い夢に魘されているようにブツブツと呟いたと聞きます。
AちゃんとBちゃんが怖くなったところで、私がふと目を開けて意識を取り戻し、連絡を受けた母が迎えに来たところに繋がるのです。
そこまで話したBちゃんは、おずおずと私の表情をうかがい見ます。
「覚えてない?」
正直覚えてないので、なぜそこでOちゃんの名前が挙がるのか不思議でなりません。
でも、私を助けてくれたあの白い腕がOちゃんだと思うと、私は少し嬉しく思いました。
Oちゃんが私を護ってくれているのだと、安易に思ったのです。
「もしかしたらOちゃんが助けてくれたのかな。なんてね」
私が空元気で冗談を言うと、Bちゃんがまだ何か言いたげな顔をしていたので「どうしたの?」と聞くと、「なんでもない」と首を振るのでした。
その後、宿題もキリが良いところで切り上げ二人は帰りました。
ですが、私の心は穏やかではなく、Oちゃんについて考えていました。
もし、本当に海で溺れた私をOちゃんが助けてくれたのなら、それは素敵なことだ。
でも、何か違和感が拭いきれない、そんな悪寒が迸るのです。
その晩、私は夢を見ました。
深く暗い海の底へ沈んでいく私。
必死に手足をばたつかせても体は沈む一方で、私は藁をも掴む気持ちで手を伸ばします。
この先には真っ白い顔をした少女が真っ暗な眼孔を私に向けており、私は思わず手を引っ込めました。
すると、ガクンと体が引っ張られるので下を見れば、白く細い腕が私の足を掴み、グイグイと海底へ引き寄せるのです。
「Oちゃん、やめて。Oちゃん、やめて」
夢の中の私はそんなことを復唱していました。
そう、あの白い顔の少女はOちゃんなのだと確信しました。
そして、やっぱりあの白い腕もOちゃんのもの。
子供の純粋さが恐ろしい未練のようなものになってしまうのかな
ほっこり話だと思ったら、後半めっちゃ怖かった
めっちゃ怖くて読み応えあった。
ていうか作者さん中3!?