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心霊

足が太いさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

どこまでもついてくる
長編 2022/01/15 08:39 4,379view
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佐伯さんの言葉に、両親も私も妹を見ると、妹は「…うん、あの人、この家には入ってこれないみたい」と、言ったので、ここは安全なんだという気持ちから誰ともなくはぁーっと深くため息を吐きました。

「あれは一体何なんでしょうかね…?」
「あれはねー…、俺もそんな詳しい訳じゃないから当てずっぽうなんだけど、あの場所に集まった人間の恐怖心とか、そういうものの塊というか…」
「霊ではないんですか?」
「霊って感じではないね。俺も話し聞いた時は、あの場所で亡くなった人の霊とかそういうもんだと思ったけど、そうじゃないみたい」
「…?」
「例えばその場所が心霊スポットだって事前に知ってたり、どんな霊が出るのか噂話を聞いていると、『ここは霊が出るぞ』『その霊はこんな姿をしていてこんなことをしてくるぞ』って強く意識するじゃない?それがたくさん集まって、勘の鋭くて影響されやすい人には見える霊のようなものになったのが、今この家の玄関の前にいるものの正体」
「でも、私達は三段壁がそんな、心霊スポットだとは知らなかったんですけど…」
「うん、だから○○さんと○○君(両親)、それと○○ちゃん(私)は何も見えない。でも、○○ちゃん(妹)は知ってたから、だから見た」
「○○(妹)、知ってたの?」

母が妹に問いただすと、妹は「うん…、友達に三段壁に行くって言ったら、あそこはよく幽霊が出る場所で、こういう風な幽霊がいて、こんなことをしてくるって…」と、絞り出すように小さな声で答えました。

「でも、電気が消えたのは?」
「あれはまぁ、心霊現象になるのかな?そういうことも起こるんだよ。まぁ、とにかく、『怖い怖い』と思うから見えてしまうし起こってしまう。だから、『そんなものはいない、怖いことも起こらない』と思うことが、一番手っ取り早くこの状況を終わらせる方法」

佐伯さんはそう言って、「今日は取りあえず俺の家でゆっくりしていって。明日になったら元通りになっているから」と笑い、おやすみと言って自分の部屋に戻っていきました。
私達は「佐伯さんが言うように、怖くない、何もいないと思おう」と決めて、その日はそのまま佐伯さんの家に泊まったのです。

翌日、妹が佐伯さんと一緒にそーっと玄関扉を開けて外を見てみると、そこには何もいないようでした。
佐伯さんの家に行ってからは全く怪現象も起こらなかったですし、佐伯さんの家から我が家に帰る道中も妹曰く、「何もついてきていない」とのことで、やっと恐ろしい夜は終わったのです。

得体の知れない何かがついてくる、しかもそれが特定の人物にしか見えないというのは、身の毛のよだつ恐ろしい体験でした。
佐伯さんの話しは理解出来た部分と、未だに良く分かっていない部分があります。
しかし、「怖いと思う気持ちが霊のようなものを作り出してしまうことがある。それによって恐ろしい体験をする」というのは、実は私達以外の人の身にも起きているのではないかと思います。

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