招かれた深夜の火葬場
投稿者:誠二 (20)
俺の家の近所には火葬場がありました。
この火葬場は古く不気味で町の人間は近寄りたがりません。火葬場から煙が出ている日は人死にがあったとわかるので特に敬遠されました。
俺も物心付いた頃から漠然と不吉な印象を覚えていたのですが、ある時おかしなものを見ました。
それは寝苦しい夏の夜でした。夜の2時頃にうなされて目を覚ますと妙な胸騒ぎを覚えました。
嫌な予感に駆り立てられて部屋を徘徊し、窓のカーテンをめくって外を一瞥し、理解をこえた光景に固まりました。
なんと、火葬場の細長い煙突から一筋の煙が出ているのです。今は深夜、こんな時間に火葬場が稼働しているなんて絶対ありません。
ああ、きっと夢を見ているに違いないと解釈しました。火葬場の煙突から立ち上る煙を目撃した瞬間意識に靄がかかり、煙の正体を間近で確かめたい衝動に駆り立てられ、パジャマに裸足で家を出ました。
住宅街を抜けて火葬場に赴くと、煙突が吐き出す煙の量がやけに多いことが気になり始めました。夜空に流れる煙はモヤモヤとたなび、苦痛に歪んだ人の顔を形作ります。
10分ほど歩いて火葬場に到着すると、あたり一面の煙で視界は閉ざされてしまいました。
いくらなんでもこんなに煙が立ち込めているのはおかしい、何故空に上っていかないのか怪しんでいると、煙の中から亡者の怨嗟の声が響いてきました。
恐怖に凍り付く俺の視線の先で煙が集まり、一個の巨大な顔が出現しました。
「うわああああ!」
自分の悲鳴で目を覚ますと朝になっていました。カーテンが開け放たれた窓からは強烈な日差しがさしこんでいます。
なんだ、夢だったのかと安堵して床に降り立ち、自分の足が真っ黒に汚れているのにびっくりしました。寝る時に閉めたカーテンが開かれているのも不自然です。
あれは本当にただの夢だったのでしょうか?火葬場の煙突からは何が吐き出されていたのでしょうか。
?幽霊?の目的はなんですか?