廃旅館の女将
投稿者:ファンタジスタ (10)
短編
2022/01/03
07:55
1,728view
男友達と4人で興味本位で地元で有名な廃旅館に行った時の体験談です。
見た目はよくある寂れた建物でしたが周りが草木に囲まれて私たちと旅館以外何も無い場所でした。
正面入り口から入ると中は薄暗く、廊下に生々しい写真や、壁にはおそらく太い赤ペンで書かれた血痕や手形がありました。
「趣味の悪い悪戯だ」と心の中で思いながら廊下を歩いていきました。
前方に階段が見えてきましたが、私は2階に上がらずに引き返して帰りたいと思っていました。
しかし、気が短く腕っぷしが強い先頭を歩く男が躊躇せず階段を登って行きました。
階段を登り切ったところで、さらに上の階から床が軋むような音が聞こえてきました。
耳を澄ますと、一定の間隔で聞こえてくるその音は明らかに上の階を誰かが歩いている音でした。
私たちは怖くなり立ち止まりました。
すると先頭を歩く男が一人で階段を駆け上がって行きました。
すると、待つ暇もなく男が階段を降りてきて、真剣な表情で「早く出るぞ」とだけ言ってまた先頭に立って出口に向かいました。
外に出て男に話を聞くと、「3階に行く階段を登る途中で、壁際から女が半分顔を出しながら覗き込んで俺を見ていた」と言いました。
今でもあの時の床の軋む音は耳に残っています。
余談ですが、その旅館の帰り道、私たちは交差点で車の衝突事故を起こしました。
2台とも廃車になるような事故でしたが、奇跡的に私たちも相手も命は無事でした。
前のページ
1/1
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 15票
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。