予知と肝試しと悪寒の話
投稿者:赤壁二世 (13)
「おい、B。なんで黙ってんの?もしかして、何かいんのか?」
Aの問い掛けにBはゆっくりと頷くと、その顔は恐怖で今にも泣き出しそうに歪んでいた。
「やだやだやだ!」
D子が悲鳴に近い声をあげてその場に踞り、D子を立ち上がらせようとAとC子が腕を掴む。
「おまえら、そこからゆっくり動け、ゆっくり」
まるで飛び降り自殺を図る人を宥める穏やかな口調で指示を出すBに、俺達は狼狽えながらも従いゆっくりと爪先からにじる。
D子を引き上げて一歩一歩着実に移動していたところでBが「あっ」と声を漏らすので、俺は思わず振り向いてしまった。
俺の真後ろ、ちょうど脹脛の辺りに真っ白い幼児が膝を抱えて見上げている。
「わあっ、うわっひゃあああ!?」
とてもじゃないが人に聞かせられないほどカッコ悪く裏返った俺の悲鳴は、その間抜け声が号令となり、カエルの歌の輪唱の如く悲鳴がみんなに連鎖した。
「ぎゃああああ」
「きゃああああ」
男女の絶叫が共鳴してかなり耳に響き頭がキンキンする。
そして、気がついたときには勝手に足が走り出していて、俺達は坂を猛ダッシュで駆け降りていた。
あっという間に麓近くまで逃げてきたせいか、背後に奴の気配はなかった。
「やっべー、マジあれ、ホントやべー」
息切れが整うよりも感想が溢れるBに、俺は同意したように大きく頷く。
勾配が終わり緩やかな一般道に出たところで足は止まり、5人は完走後にクールダウンをするようにヨタヨタと歩いていた。
「おま…、○○、あれ見たか?」
「お、おう。マジヤバかった」
Bが硬直していた理由はあの幼児を見たからだと俺は今更ながら納得したのと、アレを見たのが俺だけじゃないと知って胸を撫で下ろす。
「なんかいたの?」
俺とBだけが通じ合っているのを横目に聞いていたC子が訊ねる。
だが、アレを見てない人に説明しても信じてもらえるかどうか自信がなかったので、とりあえずBに視線を促す。
Bは少しの間を置いて歩きながらポツポツと話し始めた。
「実は…」
Bは、藪に入るとあの不気味な絶叫が妙に大きく聞こえるようになり、思わず枝を振り回したらしい。
それを見た皆が笑うもんだから、文句を言うために振り返ったわけだが、俺達の背後の木の影から、びしょ濡れの女性と思しき人影がじっと佇んでいるのを見て驚愕していたそうだ。
「で、その女がお前らに手を伸ばそうとしてたからどうにかしてその場から動かそうとおもって」
それでBなりに女を刺激しないように俺達に避難誘導しようと思い至ったわけだが、俺が悲鳴をあげた事で全員参加の駆けっこが始まってしまったという一連の流れだった。
たまにそうゆう奴いてるよね!
ホモ系ではなく、預言者みたいなの。
アッー!