最後の帰宅
投稿者:ZOO (3)
これは祖父が亡くなった時の話です。
祖父は足が悪く歩くときに独特な足音がなる人でした。片方は引きずるような音、もう片方は強めの足音がなるのです。
そして歩調がゆっくりなので足音だけで祖父が歩いていることが私たち姉妹誰もが分かりました。
ちなみにわたしは三姉妹の長女です。
祖父は脳出血で入院しており、いつ亡くなってもおかしくない状態で
親族が祖父の家に集まり病院への呼び出しと帰宅を数日間繰り返していたのです。
その日も夜22時頃また呼び出されたのですが、幼い妹たちはもう寝る時間だったので私達三姉妹だけが留守番をしました。
きっとまた落ち着いて帰宅することになる、親族はそう考えていたからです。
残ったのはいいものの、三人ともなかなか寝付けませんでした。
そんな時、玄関の扉が開いてその次の引き戸が開閉し、階段を上ってくる音がしたのです。
父達が帰って来た!急いで寝ないと怒られる!と布団に潜ったものの声などは聞こえません。
親族が集まっているのですから、賑やかになるはず。
そして、よく聞くとその足音はゆっくりで入院しているはずの祖父のものとそっくりなのです。
引きずってドン。引きずってドン。
その足音は2階の祖父の部屋の方へ歩いていきそして消えました。
三人全員が同じ音を聞いたので、黙っているわけにもいきません。
ガラケーのライトを点けて3階の寝室から2階へこっそり降りていきましたが、電気は点いておらず誰の気配もしません。
怖くなったのと泥棒だったらまずいとも思い、部屋を調べることはせず寝室に戻り父に電話かメールで連絡しようとした時でした。
逆に父から電話が来たのです。
それは祖父の訃報を知らせるものでした。
そこからは葬式や初七日など怒涛のように過ぎていきました。
葬式の合間に親族にこの夜のことを話し、最後に何か忘れ物でも取りに来たのかなとなったのです。
ちなみに父達が帰ってきてから家に人が隠れていないことも確認しています。
10年近く経った今でも忘れられない一夜です。
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