「おめどご嫁にはむげ入れね」
投稿者:空穂 (6)
友人のKくんは、ある日奥さんからこんなことを頼まれたという。
「弟が結婚することになったんだけど、お嫁さんが来るための儀式を手伝って欲しいの」
お嫁さんが来るための儀式を手伝う……?
結婚式に出て欲しいとか、その準備を手伝って欲しいとかならわかる。
しかし、「お嫁さんが来るための儀式」とはどういう意味だろうか。
Kくんが奥さんに尋ねると、彼女はなんとなく歯切れの悪い言い方で、
「うーん、なんていうか、うちの家系ならではの風習っていうか……。ちょっと珍しいかもしれないんだけど、やらないといけないんだよねー。ごめんね、面倒なこと頼んで」
と言った。
Kくん夫婦は都内に住んでいるが、奥さんの実家は東北のかなり田舎にある。
こりゃあ田舎ならではの風習ってやつかな。大変だなー、とKくんは思ったが、義実家からのお願いを無碍に断るわけにもいかない。
次の連休を使って、夫婦で東北に里帰りをすることになったらしい。
正月ぶりに顔を合わせた義両親と義弟は、あたたかくKくんを迎え入れてくれた。
「遠くから悪いねえ。来てくれて助かったわぁ」
「お義兄さん、すみません。僕のためにわざわざお休みを使ってもらって」
丁寧に頭を下げられて、Kくんは慌てて首を振った。
「いやいや、こちらこそ久しぶりにこちらに来られて嬉しいです。帰りはちょっと観光もしていこうって話してるんです」
「そうですか。お手伝いしてもらうのに悪いけど、ゆっくりしていってくださいね」
「ありがとうございます」
それにしても……。と、Kくんは不思議に思った。
義実家には、Kくんだけではなく、大勢の親戚が集まっていた。どの人も、Kくんが結婚式を挙げたときに見たきりの顔ばかりだ。
「なんか、他にもたくさん人がいらしてるんですね。皆さんもお手伝いですか?」
「そうなのよ。田舎の風習でねえ。大袈裟でおかしいでしょ」
「いえいえ……。大切な儀式と伺っていますから」
Kくんはそう答えたが、内心「こんなに大勢で一体何をするんだろう」と訝しんでいた。
集まっているのは皆、成人した男性ばかりで、女の人はKくんの奥さんと義理のお母さん、あとは付き添いで来たのであろう親戚の奥さんが1人2人だけだった。子どもは1人もいない。
それに、もう一つ気になることがあった。
「お嫁さんが来るための儀式」と言うのだから、てっきり義弟のお嫁さんもこの場にいるのだと思っていた。
しかし、当のお嫁さんは、なんと来ていないらしい。
それとなく聞いてみたが、みんな「あ〜、そうなんですよ」とか「この儀式はそういうものなのよ」などと要領を得ない返事しか寄越さない。
そもそもKくんは、その「儀式」で何をするのか何も説明を受けていなかった。
奥さんからは「着いたら説明されるから」と言われていたが、誰も何も教えてくれない。
なんとなく、こちらからは聞き難い雰囲気だった。Kくんはソワソワしながら待っていたが、あっという間に夜になってしまった。
おもしろかった!!
なんとなく八尺様を思い出しました
Kくんお疲れ様です。
先祖と時代が違うってのを教えてあげなくちゃ逝けないね!
男衆は生贄みたいなものかな
でも見ちゃったらどうなるんだろう
次その風習に参加するときは、貴方のほうから、「貴女をひどい目に合わせた人はもうここには居ない」と説得し納得させたみてはいかがでしょうか。
じゃないといつまでもその風習は終わらないし、その女性もうかばれない様な気がします。
本家だけに執着してるようだから
無くしちゃえば?本家。
万が一義弟夫婦に子供が産まれなかったらいい機会。
もう養子縁組だの新しい嫁で再婚だの余計なことをして本家存続はしないように。
田舎のいかにもな話だな。バケモンも大変だ。
何も事情を知らぬ、血縁者でもない親戚をわざわざ呼び付けて参加させる意味は?
頭数は多ければ多いほどいいってこと?
事情を知らない人間を入れると失敗する恐れがあるのにね。
いかにも片田舎にありそうないわくつきの話です。
無念の死を遂げた不憫な娘の怨念は、そう簡単に消えることはないでしょうが、もうかなり昔のこと。未だに誰一人成仏させてあげられないとは情けない。大の大人たちが、事情も知らない部外者まで巻き込み、ただただ怯えおののくだけの体たらく。読みながら怒りすら湧いてくる胸糞話ですが、内容ストーリ展開、実話かどうかは定かではないが、面白く読めました。
方言から見て秋田県の県南地方なのかな。面白かったです。
話に引き込まれ凄く面白かったです。
相手にしてみれば、酷い仕打ちを受けそれでも律儀に嫁に貰ってくれと出てものの、拒絶され続ける事を考えると何とも理不尽で切ない話でした。
もし、失敗した時はどうなるのか?怨みの強さから恐ろしい事になるのは必至ですね。
大丈夫。慣れる。
あちゃー、このセリフ、噛んでしまいそう。
途中までエロ漫画展開かと思ってしまった
悲しいお話だった
滅多に出会えない上質な怪談でした。ありがとうございます。
子孫に罪は無い?拒み続けて傷付け続けて罪は無い?
そんなクズみたいな家系は廃れてしまいなさい。
子孫に罪はない。
「もし自分の親が殺人者だった時、自分が償う」そういう気概を持った奴だけが、彼らを避難できるとは思う。
私は親に罪や借金があった場合相続を拒否すると思う。
逆に自分が被害者だった場合、犯人を死ぬほど恨むが、その子供達に牙を剥くことは無い
怪異とは、これくらいの距離感が心地いい。