ドッペルゲンガー
投稿者:空穂 (6)
Eさんの幼馴染のAちゃんは、昔からよく「自分のドッペルゲンガー」を目撃されていたという。
Eさんが覚えている一番古い記憶は、まだ2人が幼稚園児だった頃のものだ。
その日、EさんはAちゃんの家で一緒に遊んでいた。2人は和室にいたのだが、途中Eさんはトイレに立った。
用を足して和室に戻ろうと廊下を歩いていると、リビングのテーブルにAちゃんが俯いて座っているのが見えた。
「あれ?」と思い、Eさんはリビングに入った。
「Aちゃんどうしたの?」と尋ねるが、Aちゃんは暗い顔で俯いたまま何も答えない。
「Aちゃん!無視しないで!!」とEさんが近づこうとしたとき、後ろからパタパタと足音が聞こえ、同時にAちゃんが「 Eちゃん!!おやつ食べよう!」と駆け込んできた。
え?!と思い、テーブルの方を振り返ると、そこにいたはずのAちゃんは跡形もなく消え去っていた。
次に見たのは、小学生の頃だ。
Eさんが忘れ物をして放課後の学校に戻ると、誰もいない教室にAちゃんがいる。
教室には鍵がかかっており、その鍵は今Eさんが職員室で借りてきたばかりだ。なぜAちゃんが中にいるのだろう?もしかして鍵が閉め忘れられていた?
不思議に思って扉を開けようとするが、やはり鍵がかかっている。
Eさんは「???」と思いながら鍵をあけて中に入った。
「Aちゃん、何してるの?」
Aちゃんは、暗い顔で俯いたまま、黙って席に座っている。
Eさんが声をかけても反応しない。肩を叩くと、ユラーッと揺れるだけで、こちらを向きもしない。
不気味に思ったEさんは、逃げるようにその場を離れた。
翌日学校で話を聞くと、Aちゃんは放課後、他のクラスメイトとずっと遊んでおり、その時間は学校にさえ行っていないらしい。
そんなことが何度もあり、Aちゃんにはドッペルゲンガーがいるという噂が立った。
しかし、Aちゃん自身は全く自覚がないらしく、
「ただのそっくりさんじゃないの??ドッペルゲンガーとかいるわけないじゃん?」と笑い飛ばしていたらしい。
さらに、「第一ドッペルゲンガーだとしても、暗い顔で俯いてるっていうのが気に食わない。私そんな根暗じゃないし」とまで言っていたそうだ。
確かにAちゃんはいつも元気で明るく、暗い顔で俯くような子ではなかった。
そんなAちゃんだが、高校生になった頃、急に元気がなくなってしまった。
あまり学校にも行かなくなり、家で寝たきりの生活を送るようになった。
特に病気というわけでもないらしいのだが、理由を聞いても曖昧な返事しか返ってこない。親御さんに聞いても、彼らもなぜ娘が塞ぎ込んでいるのか全くわからないのだと言う。
Eさんが心配してお見舞いに行くと、Aちゃんはすっかりガリガリに痩せこけ、力のない暗い顔をしていた。
そんな生活がさらに続き、お見舞いに行くたびにAちゃんはますます痩せて、元の元気な彼女が嘘のように暗くなっていった。見るに見かねて、ある日Eさんは尋ねたと言う。
「ねえ、そんな姿のAちゃんを見るの辛いよ。なにかあったなら教えてよ。私たち親友でしょ」
すると、Aちゃんは暗い顔で俯き、こう答えた。
なにこれこわい
ドッペルゲンガーに会うとどうなるんだ…