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心霊

疳の虫さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

ヨガで学んだ霊の通り道
短編 2021/11/20 12:04 853view

ある夜、私が部屋で寝ようとしていた時のことです。
その日は、体は疲れていたけれど変に頭は冴えていて、頭の中をぼんやりと色々な考えがよぎっていました。

唐突に、私は自分の体に何か異変が起きたことに気づきました。何か重さのあるものが体に乗っている?いや、そうではない、乗っているならこんな風に横から締め付けるような重さにはならない。
私は目を閉じたまま感覚に集中し、自分の身に起きていることを自覚しました。

誰かが私の体の左半身に引っ付き、強い力で私にしがみついているのです。
頭の中にぼんやりと、その誰かの皮膚感覚が伝わってきました。若い男性のようでした。身長は私と同じくらいで腕は私より太い。

私は自分の身に起きていることに驚きながらも、なぜかその出来事に恐怖を感じていない自分にも戸惑っていました。
それまで何度か霊を感じたことはありましたが、そんな風に肉体的に重みを感じたのは初めてでした。

このままでは良くない、どうしようか。そんなことを考えていた時、ふとヨガの技術、グラウンディングを思い出しました。
意識を足に落とし、地に足が着いた感覚を強化する技術で、瞑想の基本的スキルでもあります。ヨガや瞑想でその感覚とやり方を知っていた私は、早速グラウンディングを始めました。

足の裏、土踏まずに意識を落とし、深く息を吐き、呼吸の振動が土踏まずを震わすように。
恐怖もなく静かな気持ちの私の体に、霊はまだきつくしがみつきます。

しかしそれも長く続きませんでした。私がリラックスして地面とのつながりを取り戻した時、唐突に霊は重さのない存在に変化しました。
そして私の体の中に急速に入り込み、まるで滝の水が流れ落ちるように、私の頭から胸、腹、腰、そして足を通り最後に土踏まずから私をすり抜けていきました。
私の体が透明になり、その中を霊が水のごとく通り抜けたのです。

目を開けると、いつもの静かな私の部屋でした。その時、私は人の体が霊の通り道になっていると気づきました。
霊は私を通って土へ帰りたがっていて、グラウンディングがその手助けになったのだと。

そしてふと、若くして亡くなった兄のことを思い出しました。その霊が兄のものだったかどうか、今となっては分かりません。
それ以来私が霊を感じることは、少なくとも体感できる部分ではなくなりました。
もしかしたら私の道は既に開き、自分でも気づかないうちに、霊たちは私の体を抜けて土に帰り続けているのかもしれません。

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