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妖怪・風習・伝奇

ハヤブサさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

木の上に居たモノ
短編 2020/12/27 18:56 5,281view
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妖怪でも心霊でも無いかと思いますし、書く場所に迷いましたがこちらに。

私は幼稚園児の頃から武道を習っていました。
父の男なら逞しく育って欲しいという想いからだった様ですが、幼い私は週3回も行く稽古が苦痛で仕方ありませんでした。

今振り返れば良い修行でしたが、当時は本当に苦痛でした。

苦痛であった理由は稽古が厳しいとか、家でアニメが見たい等もありましたが、何よりもその道場周辺が不気味だったからです。

田舎の片隅にある雑木林に囲まれた砂利道を進むと師範のお宅や道場があるのですが、途中で潜る古びた山門も一つだけ点いた薄暗い街灯も全てが不気味でした。

農家なので土地も広く林の中に広がった場所に古い民家や道場、農機具小屋などがあるのですが、とにかく暗い。
月の無い晩に道場から離れていくと本当に暗闇なのです。
トイレも道場から離れた場所にあり、木造の古い汲み取り式。
何かが出るんじゃないかと思わせるには十分な雰囲気でした。

稽古以外に年に一度合宿というものがありまして、道場に皆で雑魚寝をして泊まり込み修行をする時が私にはこの世の地獄でした。
苦痛、怖い、そればかりでなかなか寝付けなかったのを覚えています。

小2くらいだったでしょうか。
合宿の夜どうしてもトイレが我慢できなくなった私は心底怯えながら皆を起こさない様に抜き足で道場から出てトイレへ向かいました。

ホー、ホー、ホー

フクロウや虫の音、それ以外は私の地面を踏みしめるジャリジャリという音しかしない静寂を進みトイレへ入りました。

この晩は月が多少出ていましたが、それでもやはり暗かった。
我慢し続けた為かこういう時に限っておしっこも止まらず背後が怖くて何度も振り返りました。

そんな時に

ガサッ、ガサガサッ、ガッサッ!

と明らかに風で木々が揺れるているとは思えない大きさの音がしました。

私はもう涙目で、『怖いよぉ』などと口に出して泣き言を言っていたと思います。

用をたすと急いでトイレを出て小走りで道場へ戻ろうとした際に音がした方を見上げてみたんです。

見なければ良かったのに。

高い木の枝の上にそれはいました。
右手は幹にそえてピクリとも動かずそこに立っていたのです。
薄暗いとは言え感覚的には完全に目が合い、私は動けなくなりました。
動いたら木の上のそれも動くのでは無いかと。

私が見たそれは猿の様な見た目をした生き物でしたが、確実に猿とは違っていましたし、私の地元に野生の猿など生息していません。

大きさも動物園で見た日本猿よりも2周りは多きく見えましたし、体も厚く猿より肩幅もあり腕もかなり太かった様に思えました。

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コメント(2)
  • チンパンジーとかかな?

    2021/04/06/02:07
  • 物の怪かも?木の枝辺りに結構居ますよ。

    2022/08/04/03:44

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