虫とおじさん
投稿者:ねこきち (21)
子供の頃、昆虫が大好きだった私は、放課後は毎日虫取網と虫かごをもって、公園や空き地に昆虫採集にでかけていた。
ある日、自転車で少し遠方の神社に出掛けて虫取をしていると、知らない中年男性に声をかけられた。
「虫、好きなの?」
子供心に不審な感じのしない男性だったので、素直にはいと答えると
「そうか~、おじさんも子供の頃から虫が大好きなんだ!」
と言い、手に持ったスーパーの袋を見せてくれた。
袋の中にはクルマバッタやショウリョウバッタがたくさんいて、私には宝の入った袋に見えた。
おじさんは私の羨ましそうな顔を察してか、虫のいる場所や取り方のコツを教えてあげると言って、一緒に虫を取り始めた。
おじさんのアドバイスは的確で、みるみる内に私の虫かごはバッタやコオロギの仲間でいっぱいになった。
夢中で虫取をしていたので、気付くと空は暗くなり始めていた。
そろそろ帰らないとと言うと、おじさんはそうだね、また一緒に虫を探そうねと言い、これはお土産だよと言って先程と別のビニール袋をくれた。
袋の口は縛ってあったので中は見えなかったが、持った感じ先の袋と同じかそれ以上の虫が入っていそうだった。
私はありがとう!と言って自転車に乗り、家に帰った。
私は当時、自室の大きな水槽で捕まえた虫を飼っていた。まずは虫かごの虫を水槽の中に入れた。続いておじさんからもらった袋を開け、袋を逆さにして水槽の中に虫を入れた。
ボトボトと水槽の中に大量のバッタが落ちていったが、私はすぐに異常なことに気付いた。
袋に入っていたバッタは、全て翅と脚が無かった。まだ生きていて口や触角を動かしているものもいたが、殆どが死んでいた。
私は全身に鳥肌が立ち冷や汗が流れるのを感じた。
結局、それまで飼っていたものも含め水槽の中の虫は全て近所の公園に逃がした。いや、逃がしたと言うよりも棄てた。
その日から私は虫が苦手になった。
あれから20年以上経った今も、それは変わらない。
息子の虫取に付き合ってやれないことを、申し訳なく思う。
もしかして食べるためのイナゴだったんじゃないかな?
虫を【食べるのが】好きなおじさんだったんですよ。
っということでトラウマ解消にならないですかね?
食べるためのイナゴは生かしておいてフンを出させてた気もするけど・・・。