俺には好きな女がいる。
同じ学部で同じ講座を取った時に色々話したのをキッカケに、お互い怖い話が好きなところから仲良くなった感じ。
けど、お互い自分が心霊的な体験をしたこともなく、こういうサイトや本から見聞きした話をしあうだけで、あとは、デート的な感じでスポット巡りをしたことがあるくらい。お互いワンルームの一人暮らしなのだが、まだ、部屋に招待されたことのない間柄。彼女の家に入れるような関係になりたいとずっと思っていたが、引かれるんじゃないかとかまだ早いんじゃないかとかモヤモヤした気持ちで、彼女に会える日だけを楽しみに学生生活を送ってた。
そんなどこにでもいそうな学生の俺が、先日、ついに体験してしまった。
その日はすこし、身体がだるかったのもあり、早寝しようと、布団で「早く彼女の部屋に行ってみたいな」なんて考えながらうつらうつらしていた時…
ふと気づくと、なんか知らない靄のかかったようなところにいて、立ってはいるんだが、なぜかほとんど身体の自由が利かない。
前に一歩進むのも一苦労な状態で、例えれば、めちゃくちゃ粘度の高い液体のプールに首まで浸かったまま歩こうとしているような、と言えば伝わりやすいかな。そんな感じ。
でも、前の方に誰かがいるような気がしたので、少しづつ進んでいたら、だんだん人影らしきのが見えてきて、なんとか気づいてもらおうと声を掛けようとするのだが、うまく声にならない。
しかし、向こうの人影がこちらに気づいたようで、なんか呼びかけてる。
向こうの声も液体越しに聞くようなゴボゴボしたような間延びしたような変な声。何言ってるかわからない。
ふと、これ、もしかして、俺死にかけてる?もしかして、ここはあの世への一本道で、三途の川の中?みたいなことが頭をよぎったら、なんか急に怖くなってきて、「早く帰らなきゃ」「まだ、彼女とエッチもしてないのに死ねない」みたいな気持ちで焦っちゃって…
ただ、帰ろうと焦ると、だんだん意識が薄れていって、ふと気づくと自室の布団の上。
なんだったんだ?みたいな気持ちはあったものの、初めての不思議体験を早く彼女に話そうとスマホをつかんだ瞬間…
ちょうど彼女から電話。
グッドタイミングと思いながら出ると、なんか彼女が泣きながらパニクってる。
なんとか宥めながら、話を整理すると、今、自室の壁から人影らしきものが出てこようとしたのを見てしまい怖くてたまらない、怖くて叫んでたら消えちゃった、とのこと。
………
もしかして………
それ、俺?
って、思ったけど、あまりに彼女が怖がってるので、傍にいてあげる名目で、ちゃっかり彼女の部屋に上がり込み、次の日の夜には、添い寝の流れから、想いも遂げることができました。
今も、その彼女が見た人影は俺自身だと思ってるけど、なんでこんなことになったのかなぁ?
俺のじいさんはエロかったらしいが、踏ん切りのつかない孫を助けようとしてくれたのかなぁ…
ま、いっか。
先日、ついに体験してしまった。のとこで想いが成就したのかと思ったら、ワンクッションあったのね。ま、不思議話の一つでも挟まないと趣旨が違ってきちゃうか。
なんで急にじいさんの話出てきた?
単なる夢だな。剥げてたとか、太ってたとか、単勝とか何か自分と特徴合うところあったのかな?