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心霊

川辺に咲くさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

チューハイおじさん
長編 2026/10/05 21:55 137view

彼氏との同棲を機に暮らし始めたマンションは、郊外の閑静な住宅街にあり、落ち着いた環境が気に入って引っ越しを決めた場所でした。
自宅から5分ほどの距離に広い公園があるのですが、住み始めてしばらくすると、公園内の同じベンチに、毎晩ひとりで座っている男性がいることに気がつきました。
私は21時頃、彼は日付が変わった0時過ぎの帰宅ですが、どちらの時間帯にも、植え込みと木立の隙間からベンチに腰掛ける後ろ姿が見えるので、少なくとも毎日3時間は座りつづけているようでした。
彼の隣には決まって500mlの缶チューハイが置かれているので、私たちは『チューハイおじさん』とあだ名をつけて、
「よっぽど家に帰りたくないんだね。笑」
なんて話していました。
ちなみに「おじさん」と呼んではいましたが、実際の顔を見たことはありません。
ベンチは道路側に背を向けるように配置されていたため、私たちが見ていたのは、いつも後ろ姿だけ。
でかでかとバックプリントが入った古びたスタジャン。
少し丸まった背中。

その寂しげな雰囲気から、私たちは勝手に「くたびれた中年男性」をイメージしていたのです。

ある日の夜、彼が帰宅するなり言いました。
「ねえ。今朝、チューハイおじさん亡くなってたらしいよ」
私は、何を言っているのかわかりませんでした。
「……え?」
「いつものベンチで。今朝、見つかったんだって」
彼は昼過ぎに出勤する仕事なので、近所の人たちと顔を合わせる機会が多く、その日も出勤前に、近所の奥様たちが話しているのを聞いたようなのです。
「事件とかではなかったらしいけど、結構な騒ぎだったって」
けれど私は、すぐには信じられませんでした。
「でも……今日、いたよ」

「え?」
「チューハイおじさん。さっき帰ってくる時、いたと思う」
私がそう言うと、彼は少し強い口調で、
「いや、そんなはずないよ。出勤するときに公園の前を通ったけど、ベンチのところ、ロープが張られてたよ」
と言いました。
そして少し間を置いて、
「今は公園前を通らずに帰ってきたから、見てないけど……」
と付け加えました。
「うーん……。目の端で誰かが座ってるのを見ただけだから、ちゃんと確認したわけじゃないけど……。亡くなったのは、チューハイおじさんとは別の人だったんじゃない?」
「えぇ……そんなわけないと思うけどなぁ」

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