これは知り合いのおじさんから聞いた話です。
そのおじさんは若いころ「ミニシアター」巡りを趣味にしていたそうです。
ミニシアターはざっくりいえば小規模の映画館のことで、主流の映画館とは違い館が上映する作品を選ぶため、館によっては見たこともないような珍しい映画が見られるそう。
「ほとんどの作品はあんまり面白くないんだがな、たまにすげえ面白いのがあるんだよ」
おじさんはそのような「珍しくて面白い映画」に巡り合うことを目的に、色々なミニシアターを訪れていたそうです。
これはそんなおじさんが趣味を辞めるキッカケになった話です。
おじさんはある時、地方都市に出る用事ができたのでついでにその街のミニシアターに寄ろうと考えました。
用事が終わらせた後、おじさんはぶらぶらと街を歩きました。
というのも、当時は地図アプリなんて便利なものはなかったので、街を適当に歩いて見つけたミニシアターに入るというスタイルだったのです。
「やっぱ地方だからかね、どんだけ歩いても見つかんなかったのよ」
なかなかシアターを見つけられず、諦めようかと思っていた時、大通りから外れた道にミニシアターを見つけました。
禿げた塗装と一部が消えかかっている電光看板、そして全体が纏う暗い雰囲気から嫌なモノを感じ、一瞬躊躇したものの
「こういうところの方が案外面白いものを置いているんだよな」
と過去の経験から考え、なかなか見つからず焦っていたこともあってそこに入ったそうです。
中に入ってさっそくどんな映画をやっているのか確認しようとしたのですが、映画の情報は文字だけでポスターなどはありませんでした。
受付の老人もどこか陰鬱な感じで、古臭い内装と相まって、失敗したかもしれないと内心思い始めていたそうです。
「お客さん、もうすぐ1本始まりますけどどうします?」
受付の老人にそう声を掛けられ、ここまできて何もないのは癪だなと思ったおじさんは、1本だけ見てから帰ることにしました。
劇場内は狭く座席はざっと40席ほどでしたが、意外なことに客はおじさんを除いて9~10人程度いたため、もしかしたら面白い映画なのかもしれないと少し期待したそうです。
入り口側の席に座り、上映を待ちました。
ライトが消され、映画が始まるとおじさんは形容しがたい”気持ち悪さ”を感じ始めました。
映画の内容は、ごく普通の「自主製作系映画」でそのような感情を想起させるものではなかったため、違和感を覚えながらもとりあえず最後まで見ることに決めたそうです。
結局、その映画は特別面白くもなかったようで、おじさんは気持ち悪いのと無駄足を踏んだのとですっかり気分が萎えてしまっていました。
「よくこんなもの見るのにこの人数が集まったな…」
エンドクレジットが流れる中、心の内でそうつぶやきながら、この後どうするのか考えているとライトがつき、劇場が明るくなりました。
おじさんはそこで”気持ち悪さ”の正体を知りました。
他の客が全員おじさんを見ていたのです。























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