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呪い・祟り

優治さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

予約済みの葬送
短編 2026/09/10 22:11 64view

これは、私がアルバイト先の葬儀屋で先輩から聞いた話。
存命の人の墓が、本人の知らない所で用意されることがあるそうだ。
もちろん、生前からお墓を用意することは決して珍しいことではない。家族葬では夫婦間で同じ墓をあらかじめ予約することができる。
しかし、それが赤の他人によって行われていたら。そして、それが呪殺のために予約されたものだったら。
それは、取り返しのつかない呪いをかけられたことになるのかもしれない。

先輩は言った。

「まず、本人確認をかいくぐって予約するんだ。どこでその人の個人情報を手に入れたのか知らないが、うまくやるもんだよ。お寺さんをだましてさ、戒名までつけるんだ。ほとんどの場合、俺たちは気づかない。その人の親族を名乗って予約することもある。Aって人、知ってるだろ?」

先輩は有名な富豪Aを例にあげた。

「Aは、それで死んだんじゃないかと思ってる。普通に考えて満60のよくある自然死なんだけどさ、先約が入ってたんだ。俺は彼の奥さんが訃報を連絡してきてようやく、墓の予約の重複を知った。あわてて元の連絡先を調べたら繋がらない。奥さんには黙っておいた」

先輩によれば、一時期インターネット上の「必殺!呪いのかけ方」と題してこの方法を紹介したサイトがあったらしい。しかし、2026年現在、検索にそのページはヒットしない。

何らかの力によって削除された可能性が高いという。

「Aは黒いうわさの絶えない人間だったからね。誰かに恨まれる節があってもおかしくなかった。それで復讐しようって輩がいたんだろう。けど呪いなんかで死んだはずじゃないよ。彼、飲兵衛で高血圧だったから。でも、仏さんの具合がよくなかった。別荘のサウナで心不全。一週間蒸されていたらしくて、発見されたときには全身ひどい有様で。ご家族には遺灰で会わせることになったよ」

呪いの詳細についてのソースがないため、「存命の人の墓を予約する」ということが具体的に死の根拠になるのか不明である。
情報がないということは対処することもできない。
そもそもが、オカルトチックな話だ。私にとって、にわかには信じ難い。
ただ、ここまで手を回して呪いをかける情熱を燃やす人々がいるという事実だけが、漠と存在する。

とりあえず、私の考察を書いていこう。もしかしたら、これが何か助けになるかもしれない。

1)個人情報の故人情報化について

・・・親族を偽装して墓の予約をすること。先約をいれる行為は、もしかすると命を握る行為と同等なのではないか。

2)死について

・・・この呪いがもたらす死は確実とは断言できない。ただし、Aのケースでは心不全による自然死であったが、遺体の状態が悪く幸福な死とは言い難い。これは個人の解釈なので死人の知ったことではない。そうあってほしい。

3)呪いをかける当事者について

・・・先輩の話では、「赤の他人」と説明されたが、ふと思い出したことがある。
私は父方の祖父母と同じ墓に入ることが決まっている。私が結婚して夫婦として独立の墓を用意しない限り、あるいは私が夭折した場合この墓に入ることが確定している。この手配をしたのは他でもない私の母である。

「お金がなくてこんな形になっちゃったけど、家族みんな一緒でいいでしょ? 私が死んだときもそこに直葬でいいからね」

母の言葉は、私には意外に感じられた。なぜなら母は祖父母との折り合いが悪く、過去にいびられていたという話を以前聞いたからだ。

「え、母さんは父さんとだけのお墓に入るんじゃないの?」

「何を言ってるの。母さんも父さんもみんな一緒よ。本人もそれがいいってさ。」

墓の予約をした翌年に祖父母は没し、父もまた数年後、後を追うように脳出血で没した。
私は大学進学で実家を離れ、実家には母ひとりである。

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