いわゆる僻地、陸の孤島、限界集落と言われるような地域では都会では考えられないような習慣、常識、倫理観が醸成、維持されることがある。
これはとある村落での今も続く因習にまつわる話です。
県外から就職で引っ越してきた福祉ケースワーカーのA子さんは○○村を含む地域の担当となりました。
福祉ケースワーカーとは福祉の助けが必要な人が正しく福祉の援助を受けられるように、また福祉サービスが適切に利用してもらえるようにアドバイスと監督を行う仕事です。
早速A子さんは○○村の生活保護世帯の方々を訪問面談しましたが、その際に非常に大きな違和感を感じました。なぜかどの世帯も自動車を保有しているのです。
ご存知の方も多いかもしれませんが生活保護を受ける人は一部の資産の保有が制限されます。
居住していない家や土地、当面の生活に必要な範囲を超える預貯金、解約することで返金されるふ保険そして車など生活に必須ではなく高額で売却できるものをまずは換金し生活費に充当させる必要があります。
それらを消費してもなお国の定める最低生活費に足らない場合に不足分を生活保護で補うことになります。
これが生活保護が最後のセーフティーネットとも言われる理由です。
例え車がないとどこにも行けず生活が成り立たないような地域であれば車は生活必需品として保有が認められると思われるかもしれませんが、実際は非常に厳しい要件がありそれらを満たしている必要があります。
実際に訪問して確認しましたが、この村落の全ての生活保護受給世帯には足の悪い家族がいらっしゃいました
確かに障がいがある場合通院や通学などのために自動車の保有が認められるケースがあります。
ケースワーカーとしてA子さんは各世帯に生活の状況などを聞き取りをする際に自動車保有が認められた理由となっている足に障がいのあるご家族についても確認をしました。
偶然なのかどの世帯も足の悪い障がい者の家族は年齢を問わず女性でした。
またその足の具合ですが共通して片足が足首のところで不自然に捻れているのです。
痛みはないらしく車椅子などは不要で日常生活は問題ないのですが走ったり、長距離を歩いたり、階段や坂などを登り降りするのは困難なようです。
また公共交通機関のバスも日に数度しか走っておらず街の病院に行く際に車はなくてはならないと皆さん口を揃えておっしゃっていました。
また車の利用状況についても確認しました。
これは本来の通院や通学などの使用が守られているかの確認です。
通院や通学のためという理由で認められているわけですので私的な買い物やレジャー目的で自由に乗ってよいわけではないのです。
とはいえ実態としては通院、通学の後にささっと買い物をしているようでした。
厳しく対応するのであれば指摘して改善を求めるべきではありますが、村内にまともに買い物をする施設などもないためA子さんは仕方ないことだとも思いました。
多くの受給者から車がないと生活ができない、取り上げられたら生きていけないとの声も聞くことができました。
地方都市ですら車がないと不便なことが多いのですからこのような何もない地方では車は生活必需品とも言えるであろうことはA子さんも理解しています。
A子さんは車の使用状況については通院などの目的を中心として利用されており直ちに車の保有を否認するほどの逸脱は認められない旨を書類に記載しました。
街に戻り事務所に戻ったA子さんは事務処理を進めながらもあまりに今日見た村の状況について気になってしまったので上司に聞いてみました。
「すみません、本日訪問した○○村のことで相談というか報告なのですが・・・」
「ああ、何かあったかね?」
「ええ、自動車を保有されている世帯が非常に多くて・・・。ただどの世帯も障がいのあるご家族がいらっしゃり、ちゃんと許可を取られているのでそのこと自体は問題ないのですが、あまりに多いかなと違和感を感じました。」
「・・・ああ、あそこは足が悪い人が昔から多いからねえ。」
「また足の障がいの状態も共通する点があり、また女性に偏っていることも気になりました。」
「まあまあ、たまたまそういう地域なんだよ。さて今日は処理すべき書類も多いだろうから無駄話はここまでだ。業務に戻ってくれるね?」
























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