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ヒトコワ

淡酸水さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

シフト表
短編 2026/08/14 18:09 37view

俺は、町外れにある小さなコンビニでアルバイトをしていた。

田舎だからか、夜になると客もほとんど来ない。バイトの人数も少なく、店長の田村さんと二人で店番をすることも珍しくなかった。

田村さんは面倒見がいい人だった。バイトのシフトも希望通り組んでくれるし、休憩中にお菓子をくれるし、正直、良い職場だと思ってた。

一つだけ変わっていたのは、木曜の21時から23時だけ、田村さんが「俺一人でやる」と言って、誰もシフトに入れなかったことだった。

理由を聞いても「その時間は俺一人でいいんだ」としか言わない。

ある木曜の夜、帰宅してから財布を店に忘れたことに気づいて、22時過ぎに店へ戻った。

店の電気はついていたけど、入り口には鍵がかかっていた。中を覗くと、田村さんがレジの前に立っていた。客は誰もおらず、声も聞こえない。しかし、田村さんは、お辞儀を繰り返しながら、こう口を動かしていた。

「ありがとうございました」
「ありがとうございました」

「ありがとうございました」

目の前に誰もいないのに、何十回も、同じ角度、同じ速さで、機械みたいに繰り返していた。

俺はノックできなかった。そのまま帰った。

翌日、田村さんはいつも通りだった。
「これ、昨日忘れてたよ」
そう言って財布を渡してくれた。
「昨日来てたんだ?他の人から聞いたよ」と笑った。

俺は「はい」とだけ答えた。

それ以来、木曜のシフトには絶対に入らないようにしている。

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