私は子供の頃にある絵本を読んでしまった。
題名はよく覚えていない。
古本屋か図書館か、一体どこで読んだ絵本なのかも良く覚えていない。
ただ鮮やかな紅色の絵本だったことは鮮明に覚えている。
絵本の内容はこうだ。
子供達が赤い絵本を読んでいる。
子供達はそのまま絵本の世界から地獄に落ちて地獄の木に実る不気味な果実を食べるという荒唐無稽な内容だ。
私がその絵本を読んだ夜。
故障して急停止したエレベーターの中に何時間も閉じ込められた記憶がある。
両親もその時のことを覚えている。
しかし両親の記憶と私の記憶は異なっていた。
私はあの絵本を妹と二人で読んだのだ。
しかし地獄から戻ってきたのは私一人だけだった。
両親は私はずっと一人っ子だったと今も信じている。
この話になると絵本の内容と夢物語がごっちゃになっているだけだと大笑いされる。
私の部屋のぬいぐるみがペアばかりなのは私が欲しがったからだと。
空想のお友達の為にと駄駄をこねてとうとう机をもう一つ買わせたとも。
でも信じて欲しい。
私のお下がりでいいと妹はいつも我慢ばかりしていた。
汚さないようにと大事に大事に履いていた靴を事情を全て知っている意地悪男子に傷だらけに汚された時も妹は文句一つ言わなかった。
私のおこずかいはいらないから妹に机を買ってあげて欲しいと積もりに積もった私の怒りが爆発したのだ。
あの絵本を読んだ後に私達姉妹はエレベーターで地獄にまで降ろされたのだ。
何時間もの間エレベーターは地下へと降り続けた。
階を下るにつれ外の景色が次第に赤くなっていく様子に私はエレベーターが地獄に近付いているのだと思った。
こんな長大な地下へと続くエレベーターなんてこの世にある筈がない。
余りの恐怖で動けなくなった私とは反対に幼い妹は退屈と好奇心には勝てずエレベーターの外へと降りてしまった。
私は必死に止めたのだ。
けれど私は怖くて妹が戻るのを待つことができなかった。
絵本に出てきた地獄の鬼がエレベーターに入って来たらどうしよう。
そんな恐怖にかられ、ついエレベーターの閉ボタンを押してしまったのだ。
救助隊が到着したのはその直後だった。
確かに私には妹がいた。


























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