私は市役所の戸籍課で働いている。
古い戸籍を電子化する仕事だ。
ある日、一冊の戸籍に違和感を覚えた。
山田家。
父・山田正雄。
母・山田由美。
長男・山田浩一。
長女・山田美咲。
どこにでもある四人家族だった。
だが、二十年前の戸籍を見ると、不自然な訂正があった。
長男・山田浩一。
死亡。
十一歳。
事故死。
それだけだった。
死亡届もある。
火葬許可証もある。
役所の記録としては何もおかしくない。
それなのに、なぜか私はその戸籍を閉じることができなかった。
妙な違和感だけが残った。
翌日。
仕事中、一本の電話が入った。
「山田由美さんが戸籍を取りに来られています。」
私は窓口へ向かった。
七十代くらいの女性だった。
戸籍を渡そうとすると、彼女は私の名札を見つめた。
そして青ざめた。
「……浩一?」
私は笑った。
「違います。私は佐藤です。」
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