これは、私が小学校1年生くらいの頃に実際に体験した話です。
当時、私は両親が離婚し、母と二人で団地に住んでいました。団地は小学校のすぐ近くにあったため、小学生や中学生がたくさん暮らしていました。
母はシングルマザーで仕事をしていたため、私が学校から帰る時間にはまだ家にいませんでした。放課後は友達と遊んだり、宿題をしたり、テレビを見たり、ゲームをしたりと、ごく普通の小学生らしい毎日を送っていたとおもいます。
そんなある日、友達と遊ぶ約束もなく、一人で家で宿題をしていると、突然インターホンが鳴りました。
当時住んでいた団地にはオートロックはなく、玄関のチャイムが直接鳴る仕組みでした。母からは「私が帰るときは鍵を持っているからチャイムは鳴らさない。宅配便や知らない人が来ても絶対にドアを開けちゃだめ。」と何度も言われていたので、私はいつもドアスコープから外を確認するだけでした。
その日もスコープをのぞくと、無地の作業着を着て帽子を深くかぶり、うつむいた男性が立っていました。手には伝票も送り状も貼られていない段ボール箱を持っています。
その姿を見た瞬間、なぜか言葉では説明できない怖さを感じ、私は急いで部屋の奥へ逃げ込みました。そして、その人がいなくなるまで静かに待ち続けました。
10分ほど経ってからもう一度スコープをのぞくと、男性の姿はもうありませんでした。
数日後、団地の小学生だけが集まる子ども会がありました。何気なく「あの日、変な宅配業者みたいな人が来たんだよね。」と話すと、驚くことに、ほかの子どもたちも「うちにも来た。」と言い始めたのです。
その子ども会が終わり、母と一緒に帰っていると、中学校が終わる時間だったため、団地に住む中学生のお兄さんやお姉さんたちが帰ってきていました。
私たちは「こんな人、来なかった?」と手当たり次第に聞いて回りました。
しかし、中学生は全員「そんな人は一度も来ていない。」と答えました。
後日、インターホンの履歴も確認してもらったそうですが、その男性は中学生しかいない家庭には一軒も訪ねてきておらず、小学生のいる家庭だけを回っていたようでした。
幸い、小学生のいる家庭の中に、来訪者の写真が記録されるタイプのインターホンを設置している家がありました。顔は帽子で隠れていてはっきりとは写っていませんでしたが、輪郭や雰囲気は分かる程度でした。
その写真を団地に住む中学生の女の子に見てもらうと、その子は写真を見た瞬間に表情を変えました。
「この人だ。部活が休みだった日に、みんなで集団下校していたのをみたことがあるんだけどね。そのとき、この人がずっとみんなの後ろをついて来ていた人だよ。」
その一言で、その場の空気が一気に変わりました。
当時の団地には防犯カメラもなく、警察へ相談するかどうか話し合いになったそうですが、結局、地域の見回りを強化するという対応だけで終わったそうです。
あの男性が何者だったのか、本当に宅配業者だったのか、それとも最初から別の目的があったのかは、今でも分かっていません。



























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。