この間、女友達と話しててなんとなく「本物のイタコっていると思う?」って話題を振ってしまった。
彼女は一瞬キョトンとしてから「いるに決まっているだろ」と笑った。
予想外の言葉にさらに質問を重ねると「私は元イタコだからな」と目を細めた。
そんなことは初耳だったが、彼女は俺の驚いた顔が面白かったのか、上機嫌で話し始めた。
「まず、私は25歳だ。
イタコをやっていたのは20歳から23歳までのおよそ3年間。
若いよな、明らかに天才の類いだ」
自分でそれを言うのかと思ったが、話の腰を折る気もなかったので黙って話を聞いた。
「イタコは、自身の体に霊を降ろして生きてる人間との対話を可能にするんだ。
だが、考えたことはないか? その霊に体を取られたら? 代わりにイタコ本人があの世に帰されたら――って。
偽物ならそんな心配もないけどな」
言われてみればそうなのだが、イタコだって歴史のある職業だ。
詳しくは分からないが、言葉を話す以外の権限なんて渡さないんじゃないかな。
「世の中、安全って言ったって事故は起こる。
それはイタコでも同じなんだよ」
「もしかして、何か事故が起きて――それで辞めたの?」
「そうだよ。
いつものように客の要望に応えて、あの世から霊を呼び出した。
でも、そいつが体を乗っ取ろうとしてきたんだ。
いくら天才と言っても、不測の事態に対応するには経験が必要なものだ。
まあ、かなり激しい争いだったけど――私は元イタコだったし天才だったからね」
彼女はその時のことを思い出したのか、楽しそうに笑っていた。
「ちょっと話しすぎたね、ここの会計は私がしておくから――深く考えないでくれ」
やけに落ち着きのある背中を、俺は黙って見送った。




























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